はじめに
これまでに3つの研究について7つの記事を作成しました。排卵誘発剤の記事 Vol.1 Vol.2 Vol.3
Pregnancy Loss についての記事 Vol.1 Vol.2 Vol.3
Pregnancy Loss 発生後についての記事 Vol.1 Vol.2
これらの研究から得られた情報を簡単にまとめたいと思います。
まとめ
交配精度を高めるために
超音波診断装置を用いて卵胞直径および子宮浮腫グレードを把握し、hCGを交配前に投与することで、交配適期の診断精度を上昇させ、交配後適切なタイミングでの排卵が期待できると考えられました。
この情報は容易に臨床現場で実践可能であり、畜主および獣医師の負担を大きく軽減していると考えています。
Pregnancy Loss の実態
交配後17日目から分娩までに発生するOverall Pregnancy Lossの発生率は14.7%と算出されました。Pregnancy Loss Days 17-35の発生率は5.8%、Pregnancy Loss Days 35-foaling の発生率は8.7%でした。
これらの結果はPregnancy Lossが決して稀なものではなく、すべての生産牧場で発生することを生産者および獣医師に周知する際に有用な情報となったと考えています。
さらに、Pregnancy Lossと診断され、同一繁殖シーズンに再交配した繁殖牝馬の約6割が翌年に生仔を得ることができたことで、受胎の再検査によるPregnancy Loss診断の重要性を示すことができました。
Pregnancy Loss による経済的損耗を軽減するには
Pregnancy Lossによる経済的損耗を軽減するための管理方法改善として以下の3点を推奨いたします。1点目、
定期的に受胎再検査を行うことでのPregnnancy Lossの早期発見および再交配の有用性を示すことができたと考えております。
2点目、
繁殖牝馬のBCSを適切に維持・管理することは、Pregnancy Loss の発生率を低下させるだけではなく、もし、Pregnancy Lossが発生した場合においても再交配による高い生産率が期待できることを示しました。
3点目、
分娩後初回発情での交配を見送ることはPregnancy Lossによる損耗を軽減することを示しました。
これらことを注意することでPregnancy Lossに伴う経済的損耗を少しでも軽減することができればと思います。
上記の情報は生産者および生産地の獣医師に非常に有用な情報であると考えており、受胎再検査の普及を後押ししたと考えております。
あとがき
今回の記事でこれまで7回に分けて記載した繁殖論文紹介は最後になります。以前の記事でも記載していますが、これらの研究は今から10年ほど前に集められた情報を元として行われたものです。情報としてはやや古い点があるとは思いますが、現在でも有用な情報が含まれていると考えています。
少しでも繁殖管理における参考になれば幸いです。
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