はじめに
前回は立位でも対応できる場合がある難産について調べてみました。今回は、おそらく全身麻酔を行い、後肢吊り上げでの経膣分娩を行うか、帝王切開での娩出を行う必要があると思われる難産について紹介してみたいと思います。
ただ、前回の記事で紹介した難産についても、全てが立位で対応可能な訳ではありません。症例によっては立位で対応できない場合も十分にあるため、一定時間経過後も整復できない症例では二次診療施設への搬入が必要だと考えています。
犬座
胎子の両後肢が馬体と一緒に産道に入り、後肢によりロックが掛かっているタイプの難産です。教科書的には子宮内に押し戻し、後肢の引っかかりを外して、頭から娩出することが可能であると記載されています。
ただし、このような整復を立位の馬で実施するのは非常に難しいと思います。
後肢を実際に触知できなくとも、牽引しても進行しない難産はこの失意の可能性があるので、そのことを頭に入れておくべきだと記載されています。
多くの犬座の難産は立位では整復することができず、全身麻酔での後肢吊り上げ、もしくは帝王切開を選択することになります。
Lateral reflexion
頭が完全に繁殖牝馬の頭の方に向いているタイプです。立位で鼻面を触ることができれば、立位での整復が可能なケースもあります。
ただし、鼻面を触ることができなければ、立位での整復は困難だと考えられます。
整復方法としては子宮内に胎子を十分に押し戻し、鼻面を掴みテコの原理で反転させます。頭を反転させるためには十分なスペースが必要であり、無理に反転させると子宮を損傷するリスクがあります。
立位での整復が困難な症例は後肢吊り上げの適応例だと考えられます。
Shoulder flexion
一方の前肢が肩から後ろに向いている。整復するのはかなり困難。もし、出てこない方の足を触ることができれば、整復できるかもしれないと記載されています。立位での整復方法としては、思い切り胎子を押し戻し、出てこない方の足を手前に持ってくる。この状態まで持ってこれれば、腕節の屈曲のみが残るため、この屈曲を整復して娩出する。
全く、出てこない方の足を触ることができず、胎子が生存しているのであれば、帝王切開の適応例だと考えられます。
Hock Flexion
Hock Flexionは飛節での屈曲となります。外陰部から手を入れた場合、飛端および臀部のみが触知できる場合にはこのタイプの難産が強く疑われます。
基本的には立位での整復は困難です。
腕節の屈曲と同様に、思い切り胎子を押し込み、十分なスペースを作り、慎重にテコの原理を使い、飛端を押し込みながら蹄を手前に持ってくることで整復可能です。
ただし、産道損傷のリスクは高く、後肢吊り上げもしくは帝王切開が推奨されます。
Hip Flexion
臀部のみが触知できる難産ではこのタイプが強く疑われます。このタイプでは後膝から前方を向いており、立位での整復は著しく困難だと考えられます。整復方法としては臀部を思い切り奥に押し込み、飛節を手前に持ってきて、まずはHock Flexionの状態にし整復します。次にHock Flexionの状態を整復するという2段階での整復が提案されています。
ただし、先にも触れたように整復は非常に難しく、帝王切開が推奨されています
横腹位
足が3本以上触れる場合に考えられる難産のタイプです。胎子が横向きになり、足から産道に入ってきているため非常に整復は困難となります。
頭と前肢を押し込み、後肢を牽引することで娩出可能な場合もあると記載されていますが、難しいようです。
基本的には後肢吊り上げもしくは帝王切開の適応症例と考えられます。
このようなタイプの場合、胎子が奇形であることも考えられます。
横背位
胎子の背中のみが触れるタイプの難産です。このようなタイプでは胎子が背中を産道に向け横向きになっています。
経膣での整復はほぼ不可能であり、帝王切開の適応例です。
速やかに二次診療施設へ搬入すべきだと考えられます。
今回の記事では、立位での整復が困難なタイプの難産についてまとめてみました。
このような症例の中でも立位で整復できるケースがあるとは思いますが、
おそらく整復が困難だと考えられます。
早目に診断し、適切な判断が下せるように準備していきたいと考えています。
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