はじめに
大腿骨骨折の症例は決して多くはないと思われます。多くの大腿骨骨折が新生子牛で認められることが報告されています。
僕はこれまでに1頭の大腿骨骨折を経験しています。
なかなか、難しい症例でしたが、手術から1ヶ月経過した現在でも経過は良好です。
今回は復習も含めて、Bovine OrthopedicsのPlates, Pins, and Interlocking Nailsの章から大腿骨骨折について勉強していきます。
背景
大腿骨骨折は主に新生仔牛において認められる場合が多く、成牛で認められることは稀である。ただ、成牛では大腿骨頭骨端骨折が認められる場合がある。大腿骨骨折の一般的な原因は分娩時の過度な牽引に起因すると考えられている。また、母牛が仔牛を踏むことが発症原因となる場合もある。
やはり、大腿骨骨折は新生仔牛で多いと記載されている。
難産および母牛が踏んだことが発症要因と示されている。分娩時での牽引は他に中手骨骨折の主要な要因にも記載されているため、注意が必要だと考えられる。
大腿骨骨折は近位骨端、もしくは骨幹から遠位骨幹端までの部位で認められることが一般的である。新生仔牛の大腿骨骨折に関する論文では、50例中28例が遠位骨幹端での骨折であったと報告している。
新生仔牛では柔らかい大腿骨と薄い皮質骨が大腿骨骨折のプレート固定においてもっとも問題となる点である。なぜなら、仔牛の大腿骨では骨幹に近いほど皮質骨が薄くなるためである。新生仔牛における大腿骨骨折のほとんどが不規則な横骨折もしくは斜骨折である。大腿骨骨折では骨折片の変位、骨膜の剥離、そしてそれに伴う周囲の軟部組織の損傷が認められる症例が多く認められる。
仔牛の骨はとても柔らかいことが全体の序論においても述べられている。
どうやら、記載からは大腿骨の骨幹では特に皮質骨が薄く、内固定を行う場合、注意が必要なようだ。このような理由から新生仔牛では6.5mmの海綿骨螺子を用いると有用だと考えています。ただし、6.5mm海綿骨螺子をプレート螺子として用いる場合には、螺子に角度がつけられない(ネジ山が大きいため、斜めにプレートに挿入出来ない)という問題点があるた、使用する際には注意が必要だと思う。
最近、locking compression cancellous screwを購入してみたが、シンセス社のLCPにはしっかりとははまらなかった。それでも、それなりにlockしているので、実際の症例でも使用する機会があれば、他の螺子と一緒に使用してみたい。
治療方法
大腿骨骨折の保存療法はほとんど成功することがない。この理由は大腿骨骨折ではほとんどの症例で著しくオーバーライドが認められ、骨折端により周囲の軟部組織の損傷が認められるためである。
トーマススプリントとキャスト固定の併用よりも内固定手術が推奨される。これは症例が仔牛の場合も成牛の場合も同様である。この理由はトーマススプリントとキャスト固定の併用では褥瘡の形成とスプリントのずれのために多くの場合失敗に至るためである。大腿骨遠位の骨折に対して保存療法を行なった場合、特に良好な結果を得ることはできない。大腿骨骨折に対するRush Pinによる固定も少数例報告されているが治療結果は良好ではない。過去には、どこかの学会でトーマススプリントでの大腿骨骨折治療例の1症例発表があったことを記憶している。
ここでの記載では外固定のみでは期待するような良好な予後を得ることは難しいようだ。
また、Rush Pinでの固定も良好な予後が得られていないようで、大腿骨骨折症例での第一選択は内固定手術のようだ。
内固定手術
大腿骨骨折の一般的な内固定方法はプレート固定とIntramedullary Pinningによる内固定である。これらの内固定方法は他の方法に比較し良い成績を示している。大腿骨骨幹骨折に対してステウトマンピンを用いた内固定では50%の症例でピンの変位と不安定性が認められたが、12頭中10頭で術後6ヶ月までは良好な予後が得られている。
しかしながら、大腿骨遠位骨幹端の骨折に対して、Intramedullary Fixationを行なった場合は予後が悪いことが報告されている。大腿骨骨幹骨折に対してステウトマンピンによる内固定と外固定の併用により治療した場合、9例中5例で良好な治癒を得たのに対して、大腿骨遠位骨幹端骨折では同様の治療方法では6例全てが良好な治癒しなかった。
このような結果に対して、プレート固定症例では骨折部位による予後への影響は認められない。子馬の大腿骨に対するVitroの研究では、2枚のDCPでの内固定はIntermedullary Interlocking nailでの内固定に比較しより優れた強度を示したと報告している。また、LCPはLC-DCPに比較しvitroの実験において優位性を示したことが報告されている。骨端を跨ぐ内固定を実施する必要がある場合は、このような内固定を実施することも可能である。骨端を跨ぐ内固定は骨折が治癒した後、速やかにインプラントを除去する必要がある。
カスタムメイドのIntramedullary-Interlocking Nailでの内固定で25例中20例で良好な結果が得られたとする報告がある。この報告では、25例中15例において手術から6ヶ月以上経過後に跛行および成長阻害なく良好な結果を得ることが出来たことを示している。
正しい骨折整復のためにはガイドワイヤーと手術中のX-ray撮影が必要である。
内固定方法での予後が検討されている。
私はこれまでにピン固定は経験がない。ピンの問題点としては大腿骨遠位端での骨折では著しく予後が悪いことが報告されている。
私がだた1例経験した症例はまさに大腿骨遠位端の骨折であり、プレート固定を選択した。
また、国内の報告においても同様の骨折をプレート固定で治癒したとの報告がなされている。
カスタムメイドのIntramedullary-Interlocking Nailについても示されているが、これを準備しておくのはいかにも大変そうだ。
私はプレート固定が大腿骨骨折の場合のもっとも適切な治療方法だと考えている。
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