まとめ
- 骨を覆う軟部組織が少ないため、感染に注意
- 低侵襲な方法で内固定を実施すべき
- 成牛では内固定と外固定の併用を推奨
はじめに
今回は中手骨/中足骨の骨折について勉強していきたいと思います。中手骨/中足骨の骨折は仔牛で多く認められ、キャスト固定により多くの症例で良好な予後を得られることが一般的によく知られています。今回はBovine OrthopedicsのPlates, Pins, and Interlocking Nailsの章から中手/中足骨骨折について勉強していきます。
内固定の問題点
中手骨/中足骨の骨折に対してプレートを用いて内固定手術をすることは困難である。これは中手骨/中足骨は筋肉に覆われておらず術創の閉鎖が困難なことがこの理由の1つである。
若い仔牛の中手骨/中足骨骨折に対してのプレート固定は、特に筋肉量が少なく、皮下にゆとりがないため、プレートによる内固定は推奨されていない。
また、若い仔牛では骨が柔らかいため、螺子が十分に効果を発揮せず、内固定が不安定になりやすい。上記のような要因は手術後の感染率を上昇させる。
新生仔牛では特に感染のリスクが高くなるため、低侵襲な方法、もしくは最低限のインプラントにより内固定実施すべきである。このような内固定はラグスクリューもしくはT-plateにより実施可能である。このような内固定は十分な安定性を得ることができない場合があり、状況によってはキャストによる外固定を併用することが必要である。
低侵襲な方法での内固定手術では軟部組織および血行が守られるため早期での骨形成と骨癒合を得ることができる。この部位には筋肉がほとんどなく、骨を覆うのは主に皮膚と薄い皮下組織だけとなっています。このため、プレートを挿入すると皮下にスペースが形成され、感染のリスクが高くなります。このため、この部位では低侵襲な方法で内固定を実施することが推奨されるようです。
ここでの記載にもあるように仔牛では皮質骨が大変柔らかく、通常の皮質骨螺子では十分な安定を得ることは困難な場合があります。そのため、6.5mmの海綿骨螺子をダブルコーティカルで用いる方法が推奨されています。
成牛での内固定
プレートによる内固定はキャスト、transfixation pin castを含める外固定に比較し、よい結果を得ることができる。特にこれは体重の重い牛に当てはまる。中手骨骨折では400kg以上、中足骨骨折では250kg以上の場合、それぞれダブルプレートによる内固定が推奨される。
成牛での中手骨、中足骨骨折に対する内固定手術では、キャストなどの外固定を併用すべき。キャストによる外固定を2-4週間、スプリントバンテージを2-4週間、そしてライトバンテージを2-4週間と徐々に外固定を軽減することで良好な予後を得ることができるだろう。
複雑な骨折の症例では、transfixation pin castを用いることが推奨される。中手骨で400kg以上、中足骨で250kg以上の症例ではダブルプレートによる内固定が推奨だと記載されていました。
このような明確な基準を示していてくれるため、今後、成牛の症例の際にはこの基準に従い、内固定方法を検討していこうと考えています。
また、すでに馬の骨折に備え、Transfixation Pin Castを準備してあるため、状況によってはこのTransfixation Pin Castについて牛にも応用できるよう勉強しておきたいと思います。
私には残念ながら牛の中手骨/中足骨骨折に対して内固定手術を実施した経験がありません。
過去に日高管内の獣医師が牛の骨折に対して行なった調査によれば中手骨/中足骨の骨折はキャスト固定により良好な予後を得られているようです。
このような背景から、中手骨/中足骨の骨折症例では内固定手術が選択されることが少ないと考えています。
しかしながら、成牛での中手骨/中足骨骨折ではキャスト固定だけでなく、内固定手術が必要な症例に遭遇する可能性が十分にあるため必要な手術手技について準備をしておきたいと思います。
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