妊娠雌馬の胎盤炎 (Bruna et al. 2017)

はじめに

今回紹介する論文は、繁殖雌馬の胎盤炎に関する論文になります。

紹介する論文のタイトルは
Estradiol cypionate aided treatment for experimentally induced ascending placentitis in mares (Bruna et al. 2017)
になります。

やや時期外れなものの、比較的興味がある人が多いかなと思い、取り上げました。

それではSummaryの和訳です。


Summary


妊娠娠雌馬の上行性胎盤炎モデルに対するエストラジオールシピオン酸の治療効果



この研究の目的は、基本的な上行性胎盤炎の治療薬であるtrimethoprim-sulfamethoxazole (TMS)とFlunixin meglumine (FM)に加えて、Estradiol cypionate (ECP, 長期間作用型エストロゲン)とAltrenogest (ALT, 長時間作用型プロゲスチン)を組み合わせた何通りかの治療方法の効果を評価することである。




効果判定には以下に示す2つの結果を用いた。


(1) 細菌性胎盤炎の感染開始から分娩までの期間および分娩胎仔の状態 (ハイリスク, 生存, 体重), (2) 治療後の血清ステロイド濃度 (progesterone, 17α-hydroxyprogesterone, 17β-estradiol, cortisol)。




妊娠雌馬 (妊娠300日以前, n=46) を健常妊娠雌馬群 (control group, CONT, n=8)と実験的上行性胎盤炎群 (n=38) にランダムに分類した。実験的上行性胎盤炎は子宮頚管へのStreptococcus equi subspecies zooepidemicus 接種により作成された。胎盤炎の繁殖雌馬は下記に示す4群にランダムに分類された。 

(1) 基本的な治療, TMS+FM(n=8),
(2) 基本的な治療に加えALTを投与 TMS+FM+ALT (n=8),
(3) 基本的な治療に加えECPを投与TMS+FM+ECP (n=6),
(4) 基本的な治療に加えALTとECPを投与 TMS+FM+ALT+ECP (n=6),
(5) 治療なし (INOC, n=10)。




それぞれの治療は細菌接種後48時間から開始し10日間連続で実施された。血液サンプルは毎日採取し、血清ステロイド濃度を測定した。また、胎盤炎の臨床症状を分娩もしくは10日間の治療中、毎日評価した。ステロイドはRIAによって測定された。数量データに関してはANOVAにより解析し、カテゴリー分類されたデータはFishers’ exact test により解析を行った。P<0.05を有意とした。




分娩時および分娩から7日間の生存率は各治療群およびCONT群で有意差は認められなかった (66.7-100%)。CONT群と同様にTMS+FM+ECP群ではハイリスク新生仔馬が認められなかった。これに対し、他の群では統計学的に有意にハイリスク新生仔馬が認められた (50-75%) (P < 0.05)。ECP投与を含む治療群ではCONT群との新生仔馬の体重に統計学的な有意差が認められなかった。血清ステロイド濃度は各群および経時的変化において統計学的有意差が認められなかった。結論として、実験的上行性胎盤炎モデルに対して基本的な治療であるTMS+FMにECPを加えることは有用であった。これに対して基本的な治療にALTを加えても結果に違いは認められなかった。Immunoassayによるステロイド濃度の測定は治療効果判定には利用できなかった。



感想

これまでに流産予防として一般的に用いられてきたALTよりもECPの方がより流産予防に効果的である可能性を示した論文で正直、驚きの結果となっています。

(2)の治療方法は成書にも記載されており、国内での調査においても、推奨されていた治療方法になります。この治療方法よりもECPを加えた治療方法がより有用であることは驚きです。今後、実際の臨床現場においても本論文を参考に治療が実施されていくことと思います。実施の臨床例での治療成績の報告が今後待てられると思われます。


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