まとめ
- 3時間程度の全身麻酔が必要
- ホイストがあれば骨折整復が行いやすい
- 手術後は狭いパドックで1頭飼育
はじめに
前回、前々回とBovine OrthopedicsのPlates, Pins, and Interlocking Nails の章について勉強を進めています。今回は上記の論文から手術前に検討すべき点について確認していきたいと思います。
全身麻酔と手術時間
中手骨および中足骨の成長板骨折以外の症例では全身麻酔が必要となると記載されています。中手骨および中足骨の成長板骨折の場合、局所麻酔でも可能なようです。現在、僕が勤務している病院ではプロポフォールとキシラジンの持続点滴による静脈麻酔がもっとも多く牛の全身麻酔に用いられています。
この方法は比較的安全に、2−3時間程度の全身麻酔を実施できる方法だと思います。
時折、吸入麻酔を用いる症例もいます。勤務先では馬の手術のために吸入麻酔器があるので静脈麻酔でうまく管理できない症例は吸入麻酔で管理することになります。
過去の報告から、内固定での平均の麻酔時間は長骨骨折での麻酔時間は4.5時間、中手骨、中足骨での麻酔時間は3.4時間、橈骨や脛骨での麻酔時間は4時間とされています。
また、他の論文においても平均で1.5時間から2.1時間の麻酔時間が必要となります。
このような長時間の麻酔は普段の診療では馴染みがなく、これまでとは異なる新しい知識や技術が必要になるかと思います。
麻酔時間を短縮するためには術前の入念なプランニングが必要となると記載されています。また、Self-tapping screwを用いることで手術時間を短縮することが可能となり、経済的に使用が許される状況であれば、これらのインプラントを積極的に用いることで手術時間を短縮することが可能となります。
骨折の整復
骨折の整復のためにはホイストを用いて患肢を牽引することで容易なる場合もあります。患肢にロープをつなぎ牽引することでホイストがない場合でも整復が容易となります。
僕の勤務先では主に仰臥で手術台の上に患畜を固定し、患肢をホイストで牽引して骨折を整復する場合が多いです。勤務先にホイストがあることは内固定手術を実施する際の大きなメリットになっていると思います。
残念ながら手術室の壁には支点を準備してはいません。そのため、横臥の場合、患肢の牽引は畜主や手の空いた獣医師によって行われます。壁に支点を作成できれば、横方向での牽引はより楽になるため、支点を作成可能であれば作成することでメリットがあると思います。
内固定の目標
体重の重い牛、成牛については解剖学的に正確な再建とプレートによる骨折線への圧迫による絶対的安定が目的となると記載されています。これは、これらの牛においては骨折部に加わる力が非常に大きいためです。
これ以外の牛 (例えば仔牛)では、相対的安定と二期癒合による治癒が推奨されると記載されています。
体重が重い牛ではそれほど内固定手術を実施する機会は多くはありません。
これに対して仔牛での骨折症例は多く、また内固定を実施する機会も多いものだと考えています。今回の教科書では、仔牛では相対的安定を目指すとの記載がありました。
相対的安定を目指す場合、用いるプレートはLocking compression plateになってしまいます。これはDynamic compression plate ではプレートと骨との摩擦により安定性を得ているため、相対的安定とはならないと思います。
Locking compression plateは高額であり、仔牛の骨折症例に積極的に用いるのはハードルが高いと考えています。まずはDynamic compression plateを用いて良い手術ができるように準備をしていきたいと思います。
手術後について
手術後には小さなパドックで1頭飼育できる環境が必要だと記載されています。仔牛であれば、このような環境は比較的簡単に整備できると思います。
今日はここまでです。
ではまた。
0 件のコメント :
コメントを投稿