牛の骨折;内固定手術 Vol. 2;内固定適応症例

まとめ

内固定適応症例の検討

・X-ray画像の撮影、適切な診断の把握
・手術経費について確認
・併発症、仔牛の場合は全身状態について検討
・仔牛では6.5mm海綿骨螺子を積極的に用いる

はじめに

今回の記事は内固定手術の適応症について勉強していきたいと思います。

前回同様、今回の記事でもBovine Orthopedicsの中から、
Plates, Pins, and Interlocking Nails の章の中から勉強していきます。

内固定適応症例

テキスト中には反芻獣において内固定手術適応について明確な指標は現在までに作られていないと記載されています。

これは、僕らにとって本当に悩ましい課題の1つだと考えています。牛の骨折を診療する場合、診療している骨折が内固定が必要なのか?キャストだけでも治癒するのか?創外固定が必要なのか?について明確な指針・方針がない現状はこれから改善されるものと考えています。
実際に今回紹介している論文の後半には、種々の骨折治療に対する成績が記載されています。

手術経費

牛は完全に経済動物となるので経費に関して、手術前から手術後の治療に掛かる経費について明らかにする必要があると記載されています。

明確な経費を明らかにした上で牧場主、畜主と手術について話し合う必要があると考えられています。
骨折の手術は比較的速やかに実施する必要がある為、事前にどの程度の経費を請求する必要があるのか試算すべきだと思われます。

手術に関する注意事項

体重の重い牛では横臥時間が長時間となることで褥瘡が形成される可能性があることが記載されています。

また、仔牛は内固定手術を行うことが多いのですが、
気管支炎、肺炎、下痢、そして臍炎に注意する必要があると記載されています。

これは数日齢で骨折する仔牛症例では、初乳を十分に飲めておらず、十分な抗体を有していない可能性があるためだと考えられます。

海外では非常に価値の高い牛、もしくはShow Cattleが治療対象となるようです。

日本国内では牛の価格が高く、家畜共済制度により治療費用が軽減されているため、仔牛に内固定手術を実施しても十分に採算があう場合があると考えています。

X-ray撮影

手術適応の判断を行う場合、少なくとも2方向以上でのX-ray撮影が必要であると記載されています。

現在は多くの家畜診療所でCRが導入されており、X-rayを撮影することができるようです。手術の適応・手術プランについてはX-rayを用いて手術前に適切な判断をすることが必要かと思います。

成牛

基本的に成牛では体重が重いため、内固定手術が実施されることは稀なようです。
これは、成牛のような体重の重い牛用のインプラントが無いことがこの理由の1つだと考えられます。

実際に成馬の橈骨、脛骨の粉砕骨折では、最新のインプラントを用いても予後が悪いことが知られています。

仔牛

仔牛の一般的な骨折理由の1つは、分娩時の牽引により起こると考えられています。
このような場合、骨折に対する治療も必要となりますが、初乳を飲めていないケースが多く、2次的に感染症により命を落とすリスクが高いことが知られています。

仔牛の骨折に対する治療の難しい点としては、
皮質骨が薄いことが挙げられます。

仔牛の皮質骨は薄く、螺子のネジ山が効きにくいことが知られています。そのため、プレートによる内固定を実施しても螺子がナメり内固定が崩壊する場合があり、注意が必要となります。

研究では、4.5mmおよび5.5mmの皮質骨螺子に比較し、6.5mm海綿骨螺子の方が仔牛の骨に対してより強い把持力を示すことが明らかにされました。

このようなエビデンスから
仔牛の内固定手術時には6.5mm海綿骨螺子を積極的に用いるのが有用だと考えています。












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