まとめ
- 橈骨骨折は内固定手術/Transfixation Pin Castでの治療
- 尺骨骨折の発生は稀
- 200kg未満の橈骨骨折は頭側の1枚のプレートで内固定
- 200kg以上の橈骨骨折はダブルプレート
- キャストは肘頭までしっかりと巻く
はじめに
今回はBovine OrthopedicsのPlates, Pins, and Interlocking Nailsの章から橈骨、尺骨骨折について勉強していきます。
橈骨遠位の骨折では、内固定手術もしくはTransfixation Pin Castでの治療が治療方法として選択可能である。尺骨は橈骨と一緒に骨折する場合があるが、常に一緒に骨折するわけではない。牛では尺骨近位での骨折は稀である。
過去に日高管内の先生が、牛の骨折について調査し、学会発表を行なっています。
その発表によると、橈骨遠位の骨折は、キャストのみでもそれなりに治癒していることが分かりました。そのため、橈骨遠位の骨折についてはキャストを上手く巻くことができれば、キャストのみ治癒する可能性が十分にあると考えています。
尺骨骨折は稀なようですが、全く無いわけではなさそうです。私はこれまでに1例だけですが遭遇したことがあります。この症例は、発見当初は変位が全くなく、保存療法を試みましたが、その後、徐々に骨折線が広がり、内固定手術となりました。
内固定手術
橈骨/尺骨の骨折はプレートによる内固定もしくはClamp Rod Internal Fixatorによる内固定により体重の重い牛であっても良好な予後が得られている。橈骨骨折は橈骨の頭側にプレート固定を実施する。これは橈骨では頭側がテンションサイドになるためである。200kg未満の牛での橈骨骨折に対しては頭側のDCPのみで内固定が可能である。これ以上に重たい牛での橈骨骨折には頭側のDCPに加えて、内側もしくは外側にもう一枚DCPを載せ、ダブルプレートで内固定を実施する。馬の内固定用に作られた5.5mmのブロードLCPを使うことも可能である。
橈骨の頭側がテンションサイドとなるため、1枚のプレートでの内固定を行う際には、必ず頭側にプレートを挿入することが重要となります。橈骨は頭側方向に大きく撓んだ形状をしているため、プレートの形状をしっかりとベンディングすることが大切な点だと考えています。(まだこの手術をしたことはありませんが・・・。)
キャスト固定
肘関節のすぐしたまでキャストを巻くことで橈骨のテンションサイドが頭側から掌側に変化してしまうため注意が必要です。牛では肘頭までキャスト固定し、肘関節を固定することが可能です。このようなキャストの巻き方を実施することで骨折部にかかる力を中和することができます。
過去の報告
12本の論文から26例の橈骨・尺骨骨折の症例が報告されています。26例のうち、2例は近位骨端周囲、22例は骨幹部、2例は遠位骨端周囲となっています。
近位骨端周囲の骨折の2例は、1例は5歳であり、Intramedullary nailにより治療され、もう1例は1018kgであり、肘頭の骨折を10穴ブロードDCPで内固定を実施し良好な治癒を得ています。
2例の遠位骨端周囲は、240kgの1例は2本のラッシュピンで固定され良好な治癒を得ており、もう1例は2日例の仔牛の骨折に対してダブルプレートで内固定を実施し、良好な治癒が報告されている。
22例の骨幹骨折では、6例はclamp rod internal fixators により内固定手術を実施され、5例については良好な治癒を得ることができたと報告されています。良好な予後を得られなかった1例は534kgの重い牛でした。
16例はプレートでの内固定手術を実施され、13例は良好な予後を得ることができました。
3例では良好な予後を得ることができませんでした。これらの良好な予後を得ることができなかった3例のうち2例は9歳の牛と450kgの牛であり、やや体重が重い症例であったように思えます。また、620kgの牛でも内固定により良好な予後を得ていることが報告されています。そのため、やや体重が重めな症例であってもプレートによる内固定手術で良好な予後が得られる可能性があると考えられます。
遠位の橈骨骨折ではキャストによる固定でも比較的良好な予後が得られる可能性があると考えています。
骨幹から近位にかけての橈骨骨折では内固定手術を選択すべきだと思います。
これまでの報告から比較的体重が重いと考えられる500kgを超すような症例であっても内固定により良好な予後を得られる場合があります。
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