牛;内固定手術 Vol. 7; 中手骨/中足骨 Vol.2

まとめ


  • 中手骨/中足骨骨折に対する内固定の予後は良好
  • 内固定は主にプレート固定が選択される
  • 400kg程度の比較的体重の重い症例でも治癒


はじめに

先日の投稿では、中手骨/中足骨骨折についてBovine OrthopedicsのPlates, Pins, and Interlocking Nailsを参考にまとめたものの、症例報告をまとめた表について触れるのをすっかり忘れてしまいました。
今回は中手骨/中足骨骨折の症例報告のまとめを勉強していきます。

中手骨骨折

中手骨骨折症例に対する内固定手術は8本の論文、計19頭で報告されています。
内訳としてはプレートを用いた内固定が13頭ピンでの内固定が3頭Clamp Rod Internal Fixators による内固定が3頭でした。

プレート固定

プレート固定は13頭で実施され、50kgの仔牛から450kgの成牛までが症例に含まれています。多くの骨折は骨幹もしくは近位骨端周囲での骨折です。13頭中10頭(77%)で良好な予後が得られています。予後が思わしくなかった3頭中1頭は開放骨折に伴い骨髄炎を併発し、良好な予後を得ることができなかったと報告されています。

ピン固定

ピンでの内固定は3頭で実施され、全ての症例で良好な予後が得られたと報告されています。

Clamp Rod

Clamp Rodでの内固定は3頭で実施され、こちらの全ての症例で良好な予後を得られたと報告されています。


基本的には中手骨骨折はキャストによる外固定で良好な予後が得られることが知られています。
これまでに私は中手骨骨折をキャストによる外固定以外の治療方法で治療しているのを見たことがありません。
今回、Plate, Pins and Interlocking Nailsに記載されている表から中手骨骨折の内固定治療についてまとめました。
内固定による治療成績は19頭中16頭(84%)で良好な結果を得られており、予後は良好だと考えられます。

今後、重要な点としては、どのような中手骨骨折がキャストによる外固定では治癒せず、内固定による治療が必要なのか基準が明らかになるべきだと思います。

中足骨骨折

それでは、次に中足骨の骨折についても過去の報告を確認していきます。
中足骨骨折の内固定は7本の論文で計16頭について報告されています。 その内訳はプレートによる内固定が11頭、そしてClamp Rod Internal Fixators が5頭です。

プレート固定

プレート固定は11頭で実施され、症例は250-409kgであったと報告されています。使用しているプレートは8-12穴のDCPを使用していると記載されています。中にはダブルプレートにより内固定を実施した症例も含まれています。
体重が比較的重い症例ではBroadDCPを用いている症例も多く認められます。
11頭の症例のうち9例では良好な結果が得られました。1例ではFair、1例では残念ながらインプラントが破損してしまったようです。
このような結果から中足骨骨折に対するプレート固定の予後は比較的良好だと考えられます。

Clamp Rod Internal Fixators

Clamp Rod Internal Fixatorsでは5頭の症例が内固定を実施され、全ての症例で良好な予後が報告されています。
いずれの症例でも2セットのClamp Rod Internal Fixatorが用いられたと記載されています。

中手骨と同様に一般的には中足骨骨折の症例はキャストによる外固定で良好な予後が得られることが知られています。
今回、Plates, Pins, and Internalocking Nailsに記載されている表から情報を得ました。中足骨骨折の内固定治療成績は16頭中14頭(87.5%)で良好な予後が得られており、予後は良好だと考えられます。

中手骨同様に、中足骨骨折についてもどのような基準で外固定ではなく、内固定を選択すべきなのか明確な基準が示されることが非常に大切だと思います。

過去の記事でも触れていますが、
日高地域の牛の骨折について学会発表が行われており、その発表では牛の中手骨/中足骨骨折についてはキャストによる外固定で良好な予後が得られることが示されています。

繰り返しになりますが、
今後、どのようなタイプの中手骨/中足骨骨折がキャスト固定ではなく、内固定を実施すべき症例なのか、判断基準が明らかになることが大切だと考えています。




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