新生子適応障害症候群;Rope Squeeze での治療 Vol.2

はじめに

前回の記事ではRope Squeezeがどうして新生子適応障害症候群の治療方法となり得るのかについてご紹介いたしました。

今回はDr. Madiganらのグループの調査では
Rope Squeezeが新生子適応障害症候群の治療方法として有用であったと報告されているものの、実際に国内でこの治療方法を取り入れてみるとその治療成績はどのような結果になったのか?という点について調査を実施したので紹介してみたいと思います。

目的

今回、ご紹介する調査の目的は
”Rope Squeezeは本当に新生子適応障害症候群の治療方法として有用なのか?について検証すること”
になります。

また、”新生子適応障害症候群の新生子馬では正常な新生子馬に比較し血中ホルモン濃度が異なるのか?” についても検証すべく、今回の調査対象馬の血液中ホルモンおよび対照群として正常な新生子馬の血中ホルモンについてもサンプリングし、測定しています。

材料と方法

臨床所見から新生子馬適応障害症候群を疑う症例のうち、血液検査により感染性疾患の可能性が否定された新生子馬において、Dr. Madiganらの提唱するスコアリングシステムを用いてスコア9以上を示した新生子馬を新生子適応障害症候群と診断し、調査対象としました。



このスコアリングシステムは非常にシンプルな設計になっており、臨床的に有用性が高いと思われます。また、敗血症などの感染性疾患においても似たような臨床所見を示すことがあるため、感染性疾患の除外は必要なステップだと考えています。

調査対象となった新生子適応障害症候群の子馬は7頭でした。また、スコアが9未満であるものの、新生子適応障害症候群を疑われた子馬についてはカッコで示し3頭が該当しました。



これらの馬については、
治療方法としてRope Squeezeを実施しました。他に輸液、抗生剤の投与等の内科治療については各担当獣医師の判断により実施いたしました。

新生子適応障害症候群の子馬については
初診時、初診から24時間後、48時間後の3回で神経行動スコアおよび採血を実施しました。対照群となる正常子馬では出生直後、1日齢、2日齢、3日齢の合計4日間に渡りサンプリングを実施いたしました。

それぞれの血液サンプルについては、
Progesterone, Pregnanolon, Allopregnanolonの3つのホルモン濃度の測定を実施しました。

結果

それでは、結果についてお示ししたいと思います。
7頭の新生子適応障害症候群の子馬のうち、5頭はRope Squeeze実施から48時間以内に神経行動スコアが2未満を示し、非常に順調に良化が認められました。
しかしながら2頭については症状の良化が認められず、死亡、もしくは安楽殺が行われました。

良化が認められた5頭はいずれもCategory 1に分類され、出生時は正常だったものの、その後、臨床症状が認められた症例になります。

また、残念ながら良好な結果が得られなかった2頭についてはいずれの症例もCategory 2に分類されました。つまり、いずれの症例も出生時から臨床症状が認められました。

また、臨床所見から新生子適応障害症候群が疑われたものの、スコアが9未満だった3症例については、全ての症例でRope Squeeze および内科治療により良化いたしました。

このような結果から、Rope SqueezeはおそらくCategory 1の症例に対しては有用だと推察されます。
また、Category 2の症例については、Rope Squeezeによる治療は効果があったとは考えにくい結果となりました。

この結果からどのようなことが推察されるのか?
また、各症例の詳細については次回の記事で紹介したいと考えています。

お付き合いいただきありがとうございます。






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