馬の子宮捻転

はじめに

今日は馬の子宮捻転の症例に遭遇しました。
実は、今回の症例が2例目です。中堅と呼ばれる世代になりましたが、
まだまだ経験の少ない症例は存在します。
今回の症例は、全身麻酔を行い、開腹手術により捻転を整復しました。

整復したのは僕ではなく他の獣医師ですが・・・。

せっかく経験した症例ですので、少しだけ教科書を調べてみました。


馬の子宮捻転


馬の子宮捻転は妊娠中期から後期で認められることが報告されています。

主な子宮捻転発症馬の臨床症状は
・軽度から中程度の疝痛症状(稀に重度)
となります。一般的には他に特徴的な所見は認められないようです。

診断は主に、直腸検査により行われます。
直腸検査により、子宮の背側を斜めに走るバントを触知することができると記載があります。
(本日の症例も直腸検査での診断です。私には子宮の背側に×バンドが触知でき、
子宮捻転と仮診断、先輩にも直腸検査を行なってもらい診断となりました。)

治療方法としては以下の3通りの方法があるようです。
・母体のローリング法(全身麻酔)
・立位でのけん部切開による子宮捻転の整復
・全身麻酔での開腹手術による子宮捻転の整復

今回の症例は、
”全身麻酔での開腹手術による子宮捻転の整復”
を実施しました。
いずれの治療方法を選択するかは担当医の好みや経験に依存するのかもしれません。
それほど症例数の多い疾患ではないため、やり慣れた方法を選択する場合が多いのではと予測しています。

治療成績は妊娠期により大きく異なるようです。
子宮捻転が妊娠320日未満で起こった場合には、繁殖牝馬の生存率は97%、子馬の生存率は72-91%と報告されています。
これに対して子宮捻転が妊娠320日以降に発生した場合は、繁殖牝馬の生存率は65-73%、子馬の生存率は32-56%と報告されています。


ローリング法による整復

手術を実施できないような環境で選択可能
妊娠中期の繁殖牝馬で成功しやすい
というメリットがあります。

私たちには手術という選択肢があるため、実施することはないかもしれません。
勉強だけはしておきたいと思います。

立位、けん部切開での子宮捻転の整復

妊娠320日未満では良好な成績
妊娠末期では胎子が大きく技術的に困難
子宮の損傷が疑われる場合は禁忌
といった特徴があります。

けん部切開での開腹手術自体の経験が乏しいため、自分自身がこの手技を遂行できるのか疑問があります。そもそも、重種馬のように温厚な馬では可能かもしれませんが、私たちの診療対象のサラブレッドでこのような手技ができるのか?と不安があります。
今後、勉強と修行を行いたいと思います。

全身麻酔での開腹手術による子宮捻転の整復

妊娠後期の馬、子宮の損傷が疑われる馬でも実施可能
子宮の背側に手を入れ子宮を持ち上げるように整復
生理食塩水で腹腔内を満たすことで手技が容易に
といった特徴があります。

このスタイルの開腹手術は疝痛の際の開腹手術として日常、実施しているため、非常に慣れた手技です。このような理由から今回の症例でも選択されました。

まとめ

私自身が手術を行う立場であれば、全身麻酔での開腹手術による整復をチョイスする予定です。この方法がもっとも慣れた手技であり、あらゆる状況に対応可能だと考えています。
他の方法についても学び、適切な適応例があれば実施できるように準備していきたいです。






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