馬;感染性子宮内膜炎に対する治療法; WCERS 2016

結論

感染性子宮内膜炎
有用性が高い抗生剤;Ciprofloxacin 600mg;投与後24時間MIC維持
Biofilmへの治療;DMSOが有用

はじめに

今回の記事は、
感染性子宮内膜炎に対する薬物治療についてのまとめです。
WCERS2016での抄録から抜粋・まとめながら紹介していきます。

子宮内投与が行われる抗生剤に関する知見


Ciprofloxacin

現在、長期にわたる子宮内への副作用に関するデータは示されていない。
6頭の牝馬の子宮内に600mgのCiprofloxacinを投与したところ、すべでの牝馬で投与後24時間以上の期間にわたりMICを維持したとの研究結果あり。

Ceftiofur

1gを子宮内投与した場合、E.coliのMICを上回るのは投与後6時間のみである。
子宮内感染が認められた牝馬と感染が認められない牝馬では子宮内感染が認められた牝馬の方が子宮内に投与されたCeftiofurのClearanceが有意に早かったという研究結果あり。

Combination of PPG and aminoglycosides

AMKもしくはGMをpotassium penicillin もしくはprocaine penicillin Gと混合子宮内投与を行ってもそれぞれのE.coliに対するMICに変化は認められないとの報告あり。

CeftiofurおよびCombination of PPG and aminoglycosidesは国内でも比較的広く実施されている方法かと思います。
今回、その有用性について明らかにされたCiprofloxacinは国内での馬臨床では一般的に使用されていないように思います。
この薬剤が子宮内投与された場合、その作用時間が長いと報告されており、実際に効果を示す細菌に対して使用することで良好な臨床症状の改善が期待できると考えています。


Bio-filmに対する治療方法に関する知見


Bio-filmに対する薬剤はこれまでにさまざま報告されているが、
現在、手持ちで使用できるのは
DMSO、N-acetylcysteine、H2O2そしてOzoneになる。

これまでの研究では
それぞれの薬剤が細菌のBio-filmを破壊できる割合は細菌の種類によりことなる。

E.coli、S. zooepidemicusが原因菌の場合はDMSO、N-acetylcysteine、Ozoneで実験上すべてのBio-filmに対して有効であった。
また、K. pneumoniaeの8割に対してDMSOが有効性を示したが、他の薬剤はまったく効果を示さなかった。また、P. aeruginosaに対してはDMSOが5割の有効性、H2O2が4割の有効性を示したが、他の薬剤では効果がなかった。

DMSOがBiofilmに対してN-acetylcysteineよりも有用性が高い可能性が示された。
またDMSOの使用は30%での使用が推奨されている。

Biofilmに有効だと考えられる抗生剤についても検討されている。
人医療での報告によるとBiofilmを通過する抗生剤としては
Macrolides、
Tetracyclines、
Quinolonesが示されている。

これに対してBiofilmに対して効果が疑問視されている抗生剤としては
Beta-lactam これにはCephalosporinを含む
Aminoglycosides,
polymyxinが示されている。

Biofilmに対して抗生剤と他の治療薬のコンビネーション治療についても知見が示されている。
抗生剤と他の治療薬を交互に使用する方法も一例として提案される。
また、DMSOはceftiofurおよびciprofloxacinと併用が可能である。
しかし、N-acetylcysteineはamikacin, ceftiofur, ciprofloxacinの効果を阻害する。
そのため抗生剤とコンビネーションで使用する場合はDMSOの方が優れている。

Biofilmに対する投与薬としては、DMSOおよびN-acetylcysteineが一般的に国内で使用されていると思います。僕自身はN-acetylcysteineの方が好みでした。これは単純にDMSOの子宮内投与を実施すると子宮内が熱くなり、なんだか不安なためです。
しかし、今回の研究ではDMSOがもっとも効果を示しており、今後はDMSOの使用も積極的に実施していこうと考えています。

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