はじめに
今回は、Squeezeによる子馬の保定方法の臨床現場での有用性について記載していきたいと思います。子馬の保定は立位でも、横臥位にしても保定者は熟練とパワーが必要だと思います。
子馬の保定の問題点としては、
- 経験と体力が必要(体格も!)
- 暴れる
- ヘタリ込む
- 我慢できない
などが挙げられると思います。
立位での子馬の保定は、片手で尾を掴み、もう一方の手で子馬の顎の下から手を回し、耳を掴んで保定する必要があり、小柄な保定者では、保定を維持するのは難しい場合があります。
横臥位での子馬の保定は、両手で前肢および後肢を抱えて子馬を横臥にする必要があります。これにはそれなりのパワーが必要であり、こちらも小柄な保定者では困難です。
また、横臥にした後も頭部の保定、前肢、および後肢をそれぞれ保定する必要があり獣医師以外に少なくとも2名のスタッフが必要となります。
現状では1人のみで牧場経営している場合や、牧場経営者および作業者がいずれも高齢の場合もあり、子馬を安全に、かつ治療しやすく保定するのは困難なケースが存在します。
このような負担を軽減する方法としてDr. Madiganらの研究チームがRope Squeezeによる子馬の保定方法に関するVivo研究を実施、報告しています(Toth et al. 2012. AJVR)。
Rope Squeeze
Rope Squeezeは、ロープにより子馬の胸部を圧迫することで子馬を横臥位に導き、保定する方法です。
子馬の首にロープを掛ける、もしくは、たすき掛けでも大丈夫です。
そこから、ロープを胸部に回し、背中で半結びを作ります。さらに2回、ロープを胸部に回し、背中で半結びを作ることを繰り返します。これで、胸回りをロープ3周掛けていることになります。余ったロープを尾側方向に引っ張ることで子馬の胸部が圧迫され、子馬は横臥位へと導かれます。
Rope Squeezeでの子馬の保定
- 子馬の胸部を圧迫
- 横臥位への導入、保定
- 血中β-エンドルフィンの上昇・疼痛刺激への寛容化
上記のような手順・作用となります。
横臥位に導入された子馬は嗜眠状態で、疼痛刺激に対して寛容となるため、簡単な外科処置を実施することが容易になります。
もちろん、静脈注射、点滴などの処置についても容易に実施可能なので汎用性が高い保定方法だと考えています。
臨床応用
これまでのところ、Dr. Madiganらのグループがこの保定方法は臨床現場において有用だろうと記載しています。実際にDr. Madiganらのグループによって子馬の血漿輸血を行う場合の保定方法として非常に有用であったという学会報告が行われています。
しかしながら、実際に血漿輸血以外にどのような処置をRope Squeezeを用いて実施可能なのかについては現在までに詳細な報告がありません。
このような背景から、
Rope Squeezeを用いることで臨床現場でどんな処置が行えるのか?
という疑問の答えを明らかにするため、様々な処置について
Rope Squeezeを用いて実施してみました。
その結果については次回の記事にしてみたいと思います。
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