はじめに
前回の記事では、Rope Squeezeの報告および方法について記載しました。今回の記事では、実際にどのような症例にRope Squeezeが実用可能なのかについて
示していきたいと思います。
材料と方法
今回、Rope Squeezeによる保定方法を試用したのは22頭の当歳馬です。22頭は1日齢から1.5ヶ月齢となります。
22頭で合計62回の処置に対してRope Squeezeによる保定を試用しました。
各疾病については下記のスライドに示しています。
採血や注射などの非常に簡単な処置から腱拘縮症例に対するギブス固定についても対象となっております。
保定方法は前回の記事で紹介した通りですね。
念のため、こちらの記事でも記載します。
Rope Squeezeの方法
子馬の首にロープを掛ける、もしくは、たすき掛けでも大丈夫です。そこから、ロープを胸部に回し、背中で半結びを作ります。さらに2回、ロープを胸部に回し、背中で半結びを作ることを繰り返します。これで、胸回りをロープ3周掛けていることになります。余ったロープを尾側方向に引っ張ることで子馬の胸部が圧迫され、子馬は横臥位へと導かれます。
結果
それではRope Squeezeの保定での処置の結果を示します。新生子馬22頭に対して62回のRope Squeezeでの処置を実施しました。
62回の処置のうち、61回はRope Squeezeにより新生子馬は安全に保定され、
目的とする処置を実施することができました。
1回は処置中に子馬が暴れたため、鎮静剤を用いて処置を実施しています。
暴れた子馬は次回の処置についてもRope Squeeze保定を実施し、その際には鎮静剤の投与は必要ありませんでした。
多くの処置は20分までに終了するものでしたが、20分を超えるものでも問題なく子馬を保定することができました。
採血、包帯の巻き替え、輸液、キャスト固定、キャスト除去などの処置をスムーズに実施することが可能でした。
また、感染性疾患に対して抗生剤の局所還流や眼瞼内反に対する処置についても局所麻酔薬を併用することで実施可能でした。
さらに関節洗浄や関節内への薬剤投与についても局所麻酔を用いて実施可能であり、
多くの処置を実施可能であることが示されました。
保定の際には、多くの場合で1名のみで子馬を保定することが可能でありました。
多くの症例について安全に実施可能な方法ですが、
Rope Squeezeを実施してはいけない症例もあります。
肋骨骨折が認められる子馬では実施は推奨されません。これは、肋骨骨折を悪化させるリスクが高いためです。
また、過度に興奮している子馬では効果が限定的だと考えています。
このような場合にも推奨されないと思います。
考察
Rope Squeezeは1ヶ月齢までの新生子馬の保定方法として、安全に子馬に対する処置を実施することができるため、有用だと考えられます。
Rope Squeezeのメリットとしては、
保定方法が容易
安全に処置を実施可能
比較的長時間有効
そして、少ない人数で保定可能
な点だと考えています。
牧場スタッフの皆様にとって有用な方法だと考えられるため、牧場もしくは獣医師はRope Squeeze用のロープを準備しておくと便利だと思います。
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