はじめに
結腸捻転は繁殖雌馬でもっともよく認められます。そのため、日高地域で働いている私にとっても比較的よく遭遇する開腹手術症例になります。今回、紹介する論文は結腸捻転により開腹手術を受けた繁殖雌馬の繁殖成績にフォーカスしてまとめられた論文になります。
これらのデータは米国、ケンタッキー州の馬病院で手術を受けた繁殖雌馬を調査対象としています。
ちなみにこの記事は、馬のための雑誌である"The Horse"の繁殖関連の研究特集で取り上げられていました。
勤務先で購読してくれているEquine Veterinary Journalに掲載されていたのですが、
どうやら見落としていました。
The Horse の特集でこの論文を知りましたので、今回取り上げています。
今回、紹介する論文は、
"Reproductive careers of Thoroughbred broodmares before and after surgical correction of ≥360 degree large colon volvulus"です。
それではAbstractを和訳してみます。
Abstract
背景;結腸捻転を外科的に治療した後の繁殖牝馬の繁殖成績に関する情報は限られている
目的;結腸捻転による開腹手術実施前および手術後の繁殖成績の比較
研究デザイン;回顧的調査
方法;2000年1月から2015年12月末までにRood and Riddle Equine Hospitalで結腸捻転により開腹手術を実施され、無事に退院した繁殖雌馬の繁殖成績を調査した。情報は病院の医療記録およびジョッキークラブの記録から繁殖雌馬の繁殖成績を入手した。データはパラメトリックおよびノンパラメトリック解析を実施しP<0.05で優位と判断した。
結果;開腹手術前に交配経験があるものの未分娩だった繁殖牝馬 (n=19)では手術までに1頭以上の子馬を分娩していた繁殖牝馬に比較し、繁殖キャリア (4.4±4.5年 vs 10.4±4.5年)が優位に短く、産駒数 (3.1±3.3頭 vs 7.4±3.4頭)が優位に少なかった(P<0.001)。開腹手術前に繁殖牝馬として産駒を輩出していた繁殖雌馬では手術前の方が手術後よりも産駒数が多かった(4.8±3.0 vs 2.6±2.4, P<0.001)。結腸捻転による開腹手術が1回のみの繁殖牝馬と複数回の開腹手術を受けた繁殖牝馬において繁殖キャリアおよび産駒数に差は認められなかった。開腹手術時に3-11歳であった繁殖牝馬は手術時に12歳以上であった繁殖牝馬よりも手術後の産駒数が多かった (P<0.001)。
主な限界点;回顧的にデータを収集している点
結論;結腸捻転による開腹手術後の繁殖牝馬の繁殖成績は基本的には手術時の繁殖牝馬の年齢に強く影響を受ける。
感想
多くの繁殖牝馬のデータを用いて検討している論文です。調査頭数が多く、何か面白い結果が出るのでは?と思いましたが、
結論としてはまさに当たり前の結果が出ています。
つまり、手術時の繁殖牝馬の年齢が手術後の繁殖成績に影響を与えるという結果ですね。
これはシンプルに繁殖牝馬の繁殖成績は繁殖牝馬の年齢から大きな影響を受けるという結果だと考えています。
この結果は、開腹手術を受けた馬だけでなく、開腹手術を受けていない馬にも十分に当てはまると思います。
しかしながら、開腹手術後の繁殖牝馬であっても平均で10年程度、繁殖牝馬としての使役に従事し、平均で7頭ほどの産駒を得ています。
これは、素晴らしい結果だと考えています。
この結果は、たとえ結腸捻転による開腹手術を受けた馬であっても十分に繁殖牝馬としての価値を有することを示していると思います。
0 件のコメント :
コメントを投稿