牛の骨折;内固定手術 vol.1


まとめ

牛の内固定手術のKey Points;Vet Clin Food Anim 30 (2014) 91-126より

Key points

  • 牛の骨折の治療方針はエビデンスに基づき決定されるべきだが、残念ながら現状では適切な治療方針を示す基準は確立されていない
  • 内固定手術の実施には外科医が必要であり、時間および経費についても重要である。牛の内固定手術においてプレートによる骨接合がもっとも安定する。
  • ロッキングコンプレッションプレートの登場によりより治療対象範囲が広がる。このタイプのプレートを用いることで骨の柔らかい新生子牛や成長した体重の重い牛も治療対象となり得る。
  • 内固定は高額な価値の牛だけでなく、いくつかの骨折のタイプの治療に対して有用な治療方法である。これは内固定により早期に合併症なく治癒が期待できるため。

はじめに

AOVETでは馬、犬、猫の骨折に対するSurgery Referenceはホームページ上に記載されています。しかしながら、牛についてはAOVETでの記載がありません。

私は馬の骨折を治療する際に、このAOVETのSurgery Referenceを参考に、他の成書なども確認していきます。


Surgery Referenceは具体的な記載が多く、実際の治療に際して非常に参考になります。


牛の骨折を治療する場合、このような指針を探し出すことはできませんでした。


しかしながら、最近、Bovine Orthopedicsという教科書が刊行されました。


この教科書は2014年に刊行されたものです。
私の勤務する診療所でも昨年購入することができました。
この教科書を参考に、牛の骨折治療についてしばらく勉強していきたいと思います。


今回の記事ではBovine Orthopedicsの中から、
Plates, Pins, and Interlocking Nails の章について勉強します。


Key Points

この記事の冒頭にも示しましたが、この章では4つのKey Pointsについて示しています。

まず1点目としては、

牛の骨折の治療方針はエビデンスに基づき決定されるべきだが、残念ながら現状では適切な治療方針を示す基準は確立されていない
と記載されています。
これは、馬、犬、そして猫などと比較しての記載なのかもしれません。
僕にとっても治療の際の情報が少ないことが残念な点です。
いずれは牛についてもAOVETに加わるようなことがあればいいのですが・・・。


2点目としては

内固定手術の実施には外科医が必要であり、時間および経費についても重要である。牛の内固定手術においてプレートによる骨接合がもっとも安定する。
と記載されています。
牛は経済動物であり、経費は治療の際の主要な制限要因になり得ると考えています。
プレートによる内固定はもっとも安定しているものの、経験や十分な麻酔、手術室など必要なものが多いのも特徴です。


3点目としては

ロッキングコンプレッションプレートの登場によりより治療対象範囲が広がる。このタイプのプレートを用いることで骨の柔らかい新生子牛や成長した体重の重い牛も治療対象となり得る。
と記載されています。
ロッキングコンプレッションプレートは馬の骨折治療を格段に進化させたと思います。


牛にもこのプレートを用いることができれば、現在よりもより良い手術成績を得ることができるかもしれません。しかしながらロッキングコンプレッションプレートはダイナミックコンプレッションプレートに比較し高価であることが導入の妨げになり得ます。


現在、国内の黒毛和種は高額な取引が行われていることから、黒毛和種についてはロッキングコンプレッションプレートによる内固定でも利益を確保することができるかもしれません。


最後に4点目としては、

内固定は高額な価値の牛だけでなく、いくつかの骨折のタイプの治療に対して有用な治療方法である。これは内固定により早期に合併症なく治癒が期待できるため。
と記載されていました。
前項目と重なる点もありますが、牛の骨折治療においてもっとも重要な点の1つが経費になるかと思います。現在ではダイナミックコンプレッションプレートは価格が低下し、やや安価になっているため、十分に牛の骨折治療の選択肢となり得ると考えています。


Key Pointsを紹介するだけで、えらい時間がかかってしまいました。


明日以降もしばらくは牛の骨折について勉強してみます。
それでは




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