馬の難産;胎子の失位

はじめに

前回の記事では難産への備えについて考えてみました。

今回は難産の場合の対応について勉強してみました。

難産の場合、主な原因は胎子の体勢が異常である、つまり胎子の失位になると思います。
教科書などにも多くの失位が記載されています。

胎子の失位による難産を整復する手順は以下のように記載されていました。
1. 胎子失位の判断
2. 失位の整復

まずは、胎子がどのような位置を取っているのか判断し、次にその失位を手順を踏んで整復していくことになります。


胎子失位の判断


経験がない場合、この判断がまず難しいと思います。
私はそれなりに経験を積んだ今でも、前肢と後肢、頭の上下など判断に悩むことがあります。
今後はこれまでよりもよく勉強し、この分野について診断、診療の技術の向上を計りたいと思います。

教科書にポイントとして記載されている点は、

  • 前肢と後肢の見極め
  • 頭の上下の見極め

になります。

さて、それぞれを判断するためにどこがキーポイントとなるのか確認します。


まずは頭になります。

頭の向きを判断するためには、鼻、目、耳の位置を正しく把握することが大切です。
この中でも特に耳は判断が容易だと思います。
ただ、耳を触れない場合もあるので、鼻や目についても正しく判断できるように準備しておきたいと思います。


次に前肢についても確認してみます。

まず、大切なポイントは腕節を判断することのようです。
腕節は後ろ向きに屈曲するのでここが1つの判断基準になります。
さらに前肢では蹄と肘の間に2つの関節が存在します。(球節と腕節)。
ここも後肢との見極めるポイントの1つのようです。

これに対して後肢では、
飛節が前向きの屈曲すること、蹄と飛節の間には関節が1つしかないことが前肢との判別基準になるようです。

確かに、肘頭なのか飛端なのか判断に迷うことがあるので、このような判断基準を知っていればより正確な判断を下すことができると思います。


失位の整復

次に失位の整復についても教科書を確認してみます。
もっとも大切なことは完全に失位を整復したのちに胎子を牽引することです。
失位が完全に整復できていない状態での無理な牽引は、胎子だけでなく、母馬にも重大なリスクがある行為だと記載されています。また、子宮頚管や膣などの産道を損傷し、その後の繁殖能力に大きな影響を与えるリスクがあることも合わせて記載されています。

また以下の2点についても重要なポイントとして挙げられています。
・大量の潤滑剤の使用
・ゆっくりとした牽引

大量の潤滑剤の使用は、母馬へのダメージを軽減するために重要な要素の1つだと思います。これと同様に、腕節の屈曲症例を整復する際には蹄を手のひらで覆い、子宮に損傷を与えないよう注意する必要があります。

胎子を牽引するためには、ロープもしくは産科チェーンが用いられます。
ロープでも良いですが、産科チェーンの方が力を入れやすいと思います。
産科チェーンを用いる場合には胎子の肢に過度な力がかからないようにチェーンの掛け方を工夫すべきだと記載されています。
牽引は怒責に合わせて、行い、もし順調に胎子が娩出されないのであれば、まだ、失位が整復されていない可能性があるので再度、体位を確認する必要があると思います。




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