Pregnancy Loss を起こした馬のその後 Vol.1

はじめに

引っ越しにより、ネットの開通まで時間がかかり、更新が滞りました。
さて、前回まで3回にわたりりPregnancy Lossの発生率と影響要因に関する論文を紹介いたしました。本日からはその論文の続編になります。

背景と目的


前回までの記事では,北海道日高管内におけるPregnancyLossの実態を明らかにし, さらに Pregnancy Loss の発生を予防するための繁殖雌馬管理方法について検討しました。

しかし, 実際の臨床現場では,Pregnancy Loss の発生を完全に予防することは不可能であり, 経済的な損耗を軽減するためには, Early Pregnancy Loss の早期診断および再交配が有用だと考えています。

ただし,Early Pregnancy Loss を起こした繁殖雌馬における同一繁殖シーズン中の再交配による生産率および影響要因についての情報は限られおり、詳細については明らかにされていません。

サラブレッド生産において, その繁殖期間は限られており, 1頭当たりの価値は他の家畜に比較し高いため, 生産者は高い受胎率および生産率を期待しております。

Pregnancy Lossは,生産効率の低下の主要な原因の1つだと考えられ, 特に Early Pregnancy Lossはさらなる交配費用の発生や生産頭数の減少を引き起こし経済的損耗につながると報告されています。

これまで,Early Pregnancy Loss の発生率は3.0-12.2%と報告されており,  前回の記事で示したように国内の日高地域におけるPregnancy Loss Rate Days 17-35は5.8%であることが明らかになりました。

また, Pregnancy Lossがある一定数で発生することは完全には防ぐことができないと考えられています。 

Vanderwall と Newcombeは,臨床上, Early Pregnancy Lossを管理するために重要な点として, 早期発見により可能な限り早期に再交配することを提案しています。

しかし,Early Pregnancy Lossを起こし, 同一繁殖シーズンに再交配を試みた繁殖雌馬の翌春の生産率および生産率への影響要因は明らかになっていません。

本研究の目的は,Early Pregnancy Loss を発生し, 同一繁殖シーズンに再交配を試みた繁殖雌馬の翌春の生産率を調べ,生産率に影響を与える要因を明らかにすることです。


材料と方法

調査対象

北海道日高地方の競走馬生産牧場に繋養され,  Pregnancy Loss Days 17-35 と診断されたサラブレッド種雌馬, 延べ 82 頭 (4-18 歳) を調 査対象としました。
調査は 2007 年から 2009 年までの 3 年間で実施しました。

調査方法および調査項目

調査対象は, 交配後 17 日目 (交配日=0日目, 中央 値, 17日目) に交配後初回妊娠診断 (以下, 初回妊娠診断) に超音波診断装置を用いて受胎と診断された繁殖雌馬で, その後, 交配後 26−60 日目における超音波診断装置による妊娠再鑑定にて, Pregnancy Loss Days 17-35 と診断された繁殖雌馬です。

本研究では,Pregnancy Loss Days 17-35 が認められた翌春に生仔が得られたものを生産として定義し, 生仔を得られなかったものを非 生産として定義しました。

 各調査対象馬は以下の項目について調査を実施し記録しました。

  • 繁殖雌馬の年齢
  • 状態(未経産, 空胎馬, 泌乳馬)
  • 初回妊娠診断時のボディコンディション スコア(以下 BCS)
  •  Pregnancy Loss 診断時のボディコンデション スコア (以下 BCS)


統計解析

翌春の生産の有無と繁殖の年齢, 状態, 交配日から胚死滅診断までの期間そして Pregnancy Loss 診断時の BCS との関係について Fisher's exact tests を 用いて解析しました。

各調査項目については Excel に打ち込みデータ化しました。打ち込んだデータを JMP version 7.0 にエクスポートし統計解析を実施しています。

さて、今回はここまでです。
次回はこの調査の結果について記事にしています。

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