はじめに
感染性関節炎は生産地では比較的ポピュラーな疾患となりますが、
今でも私自身がどのよな治療方針がもっとも適切なのか?という
迷いがある疾患の1つです。
今回、感染性関節炎について面白い実験データが報告されていたため、取り上げてみました。
紹介する論文では、
関節鏡での関節洗浄とNeedle to Needleでの関節洗浄を比較しています。
それでは論文のSummaryを和訳してみます。
Summary
Objective: 死体の飛節に色付きマイクロスフィアを注入し、1-5Lの洗浄液を用いて関節鏡もしくはNeedleで洗浄した場合の洗浄度合いを明らかにすること
Study Design: 死体を用いた実験
Animals: クォーターホースの成馬の死体 (n 1⁄4 8).
Methods: 安楽殺後、1.5 ×106個の色付きのマイクロスフィアを両側の飛節に注入した。いずれの飛節についてもランダムに関節鏡もしくは3本の14G針を用いて5Lの生理食塩水で洗浄を行った。関節鏡では背内側から関節鏡を挿入し、背外側からエグレスカニューレを挿入した。Needle to Needleでの洗浄の際には、背内側から洗浄液を注入し、背外側および底外側に針を刺し、洗浄した。排出液は各L毎に採取し、含まれている色付きマイクロスフェイアの量を分光測光法で測定した。
Results: 治療方法と洗浄液の量には相互関係が認められた (P < .01)。最初の1Lの洗浄液で洗浄した段階でのマイクロスフェイアの量は針による洗浄の方が関節鏡による洗浄に比較し少なかった(P < .01)。いずれの治療方法でも、最初の1Lで多くのマイクロスフェイアが洗い出された。そのため、最初の1Lでのマイクロスフェイアの排出は2L目以降に比較し優位に多かった(P < .01)。2, 3, 4,5Lでの洗浄はいずれの治療方法においてもマイクロスフェイアの量に影響を与えなかった。
Conclusion: この研究では、14G針3本による関節洗浄の方が、関節鏡による洗浄よりもより効果的に関節内のマイクロスフェイアを取り除くことができた。このことから、洗浄の際の流速や洗浄管の太さよりも洗浄液の排液路の数がより重要な点だと考えられる。 また、1L以上の洗浄液を用いたとしても、洗浄効果の上昇は期待できないことが明らかとなった。
感想
この論文では、関節鏡での関節洗浄と針での関節洗浄を比較し、興味深い結果を得ています。このような内容は臨床上有用性が高いと思います。
さて、私自身の今後の感染性関節炎に対する治療方針についてですが、
基本的には
発症からそれほど時間が経過していないもの → Needle to Needleでの関節洗浄
発症から3-4日以上経過しているもの → 関節鏡での関節洗浄
が良いのではないかと考えています。
まず、発症から時間が経過していない症例では、関節内のデブリスが少なく、Needle to Needleでの洗浄によって十分に関節を洗うことができると考えました。
Needle to Needleでの洗浄では3本以上の針を用いて洗浄することを心がけたいと思います。
そして、発症から時間が経過した症例では、関節内にフィブリンなどのデブリスが認められるため、Needle to Needleでは十分に関節内を洗うことができないと考えています。
このため、時間が経過した症例では、関節鏡を用いて関節内のデブリスを取り除く必要があると思っています。
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