はじめに
今回の記事は、前回の記事に引き続き馬の脛骨外果骨折についてになります。前回の記事で症例および治療方法については記載しましたので、今回は治療成績から記載していきます。
それではよろしくお願いいたします。
治療成績
保存療法
3頭の馬について保存療法を選択しました。0歳馬1頭、1歳馬1頭、4歳馬1頭となります。
いずれの馬においても骨折片の変位が少ないことが保存療法を選択した大きな理由となります。3頭、全てにおいて目的の使役に復帰することが可能でした。
いずれの症例においても深刻な合併症は認められず、良好な予後が得られたと考えられます。ただし、患部の腫脹は長期間において残存いたしました。
保存療法では骨折周囲の増殖性繊維組織により癒合不全が起こり、短外側側副靭帯の破綻は避けられないと考えられており、骨折片の変位の大きい症例では推奨されません。
関節切開±関節鏡
関節切開で骨片を取り除いたのは4歳馬2頭となりました。
いずれの症例も無事に競走馬として復帰し、骨折以前と同等のパフォーマンスを示しました。復帰までは8−9ヶ月の期間が必要でありました。
関節切開と関節鏡手術の併用は1歳馬1頭、4歳馬1頭の2頭で実施されました。
1歳馬は無事に目的とした使役に復帰しました。
4歳馬については脛骨外果の骨折とは無関係の原因により競走復帰することができませんでしたが、術後の患部の状態は良好でした。
関節切開を用いた症例の予後は良好であったと考えられます。
ただし、関節切開部位の腫脹は長期間残存しました。
関節鏡手術
0歳馬1頭、1歳馬2頭の計3頭で関節鏡手術による骨片摘出が実施されました。
関節鏡は飛節の背側および底側の両方のポータルを用いて実施し、主に底側からのアプローチを用いて骨片を摘出いました。
関節鏡手術での骨片摘出のためには骨片に付着している靭帯を切除する必要があり、
そのためにバナナナイフなどの関節鏡用ナイフを用いて手術を実施しました。
術後はいずれの症例も合併症なく、目的の使役に復帰しました。
関節切開、保存療法と比較すると患部の腫脹は軽度であったと思われます。
ただし、飛節の関節鏡手術の一般的な症例である飛節のOCDの術後と比較すると、患部の腫脹は大きく、事前に畜主への十分な説明が必要だと思われます。
まとめと考察
今回の調査はではいずれの治療方法においても予後は良好でありました。この結果の大きな理由としては保存療法を選択した症例では骨折片の変位が少ない症例のみがこの治療方法を選択したためだと考えられます。
今回の結果より、
骨折片の変位が少ない症例では保存療法が治療方法の1つとして有用だと考えられます。
また、変位の大きい症例では、外科手術のよる骨折片の摘出により良好な予後を得ることができました。特に関節鏡手術による骨片摘出では関節切開に比較し、患部の腫脹を抑えることができ、外貌上も良好な結果を得ることができたと考えています。
関節切開の症例では競走復帰までの期間が8−10ヶ月程度であり、これまでの報告が示す241日の復帰期間とそれほど大きな差は認められませんでした。
このため、手術後復帰には比較的長期間の時間が必要であることを手術前に畜主に説明する必要があると考えています。
今回の結果としては、
飛節の脛骨外果骨折は適切な治療により比較的良好な予後が得られたと考えています。
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