副鼻腔炎;立位での円鋸 (Quinn et al. 2005)

はじめに

今回は少し古い論文になりますが、副鼻腔炎に対して大きな円鋸(直径5cm程度)を用いて治療している論文を紹介します。
私はBone flapとほぼ同程度のアクセスが得られ、立位でも容易に実施可能なこの方法はBone flap, 小さい円鋸に比較し有用性が高いと思っています。

それでは、早速Summaryの和訳です。






Summary


Reason for performing study;
これまでの副鼻腔に対する立位での外科手術の報告ではBone Sawなどを用いてBone Flapを行うことが基本的であった。これはBone Flapが術後の外貌が優れていると考えられるためである。この論文では立位の馬に対して、大きな円鋸を用いて副鼻腔への手術を行う方法について述べている。

Objectives;
立位の馬に対して前頭洞に大きな円鋸にて造孔することが副鼻腔に問題を有する馬に対して診断および治療の有用性を評価すること

Methods;
副鼻腔に問題を有する馬60頭に対して立位にて前頭洞への大円鋸術を実施した。
その有用性について診断、外科手技、合併症、および長期の結果(外貌についても含む)により評価した。

Results;
60頭の手術実施馬のうち54頭で臨床症状の改善が認められた。
他の馬においてもこの方法は診断的価値があった。外貌状の満足度としては56頭のうち48頭の馬主が手術後の外貌が良好であった、もしくは満足できたと回答した。

Conclusions;
大円鋸術は臨床的に有用であり、副鼻腔を十分に露出し、診断および副鼻腔内の手術を実施することが可能であった。また、大円鋸により骨を円形に取り除いたにも関わらず多くの馬で満足のいく術後の外貌を得ることができた。全身麻酔に伴うリスクとは別に、今回報告した立位での大円鋸術には以下のメリットがあった。立位での手術により出血量が少ない点。粘膜の鬱血、むくみが少ない点。解剖的に明快な点。術者が手術を行いやすい点。このような副鼻腔の手術を実施する前に十分に解剖学的な知識、手術のランドマークを学ぶことが必要である。合併症は少なく、起こったとしても短期的なものであった。

Potential relevance;
立位での大円鋸術は他の侵襲性の高い副鼻腔に対する手術方法の代替となり得る。


感想

私にとってこの論文は非常に価値のあるものだと考えています。
この方法が優れていると考える理由は以下の点です。

1点目としては、
非常に実用性が高いことが挙げられます。
この手技は、円鋸を除けば特別な道具は必要ありません。さらに円鋸についてもDIY用のものをホームセンターやAmazonで購入可能です。さらに全身麻酔の必要もない点も魅力的です。横臥位に比較し、手術時に視野が良好なので、手術が行いやすいのも実用性が高い理由の1つです。




2点目としては、
手術後の外貌が良好である点が挙げられます。
Bone Flapと比較すると、やや手術後の外貌が劣るかもしれませんが、
十分に満足が得られるレベルだと考えています。

デメリットとしては、
手術中の馬保定者に労力がかかる点が挙げられますが、
保定用の台などを用いることで大きな労力の軽減は可能だと思います。

総合的に考えると、
この手術方法は、抗生剤投与や小さなドリル孔からの洗浄などが上手く行かなかった場合、速やかに実施可能な手術方法として臨床上有用と言えると思います。

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