はじめに
こんにちは。今回はテキサツ州で開催された1歳馬市場に提出されたX-rayのX-ray所見を調査し、
競走成績への影響を調べた論文を紹介いたします。
この論文は以前に紹介したKane らの論文が発表された3年後にJournal of Equine Veterinary Scienceに掲載されました。
Kane らの論文に比較すると、調査頭数がやや少ないのですが、
参考までに取り上げてみました。
論文
それではまずAbstractを和訳してみます。
この論文の目的はテキサス州の1歳馬を対象として成長期整形外科疾患と考えられるX-rayの異常所見が将来の競走成績に及ぼす影響を明らかにすることです。この論文における調査対象は2002-2003年にテキサス州の1歳馬市場に上場された馬のうち、レポジトリーとしてX-rayが提出された348頭になります。調査対象X-rayについて評価し、異常所見について記録しました。加えて、馬の個体情報についても記録しました。母馬名、父馬名、上場番号、上場年、出生地、そして販売価格になります。競走成績を示すデータとして2-3歳時の競走成績データを用いました。調査の結果、将来の競走成績と関連性を示す異常所見は認められませんでした。第三中手骨/中足骨の矢状稜に病変が認められた馬では、この所見が認められない馬もしくはいずれの異常所見も認められない馬に比較し有意に販売価格が低い結果となりました。結論としては、いずれのX-ray画像における異常所見も2-3歳時のパフォーマンスを低下させなかったと言えます。しかしながら、一部の異常所見は販売価格の低下を引き起こしました。
この論文の大きな弱点としては、
・症例数が極端に少ないこと
が挙げられます。
この頭数規模で多くの所見は10頭を下回る頭数でしか認められないため、
統計処理を行うには例数が少ないと考えています。
論文の結論としては、全てのX-ray所見が競走成績に影響を与えなかったとされていますが、これは本当にそのような結果だと言えるのか、私自身は懐疑的です。
この論文では例数が少ないことでその信頼を大きく損ねています。
しかし、例数を大幅に増加させた調査でも同様の結果を得られれば非常に有用な情報だと考えています。
残念なことにこの論文の発表から12年が経過しましたが、続編は作成されていません。
私自身の考えは、この論文の導いた結論と同様に、
X-ray所見は著しく酷い所見を除けば、それほどまで気にするものではないと考えています。
まとめ
結論としては、全ての異常所見は競走成績に影響を与えなかった。ただし、例数が少なく、エビデンスレベルは低いと考えられます。
本日紹介したのは以下の論文になります。
Cohen, N. D., Carter, G. K., Watkins, J. P., & O'Conor, M. S. (2006). Association of racing performance with specific abnormal radiographic findings in Thoroughbred yearlings sold in Texas. Journal of equine veterinary science, 26(10), 462-474.
0 件のコメント :
コメントを投稿