反芻獣の骨折;Transfixation pin casts での治療成績 (Lozier et al. 2018)

はじめに

転職に伴い、馬の獣医師から馬と牛の獣医師になりました。
個人的には整形外科分野に興味があるので、
牛の整形について論文検索を行なっていると、牛におけるTransfixation pin castsの論文を発見したので、紹介したいと思います。

ちなみに今日、海外に注文していた馬用のTransfixation pinとpin用のドリル先が勤務先に届きました。これで馬および牛に対してTransfixation pin castsを実施することが可能になります。よく勉強しておかなければ・・・。

ちなみに本日紹介するのは、
Lozier, J. W., Niehaus, A. J., Muir, A., & Lakritz, J. (2018). Short-and long-term success of transfixation pin casts used to stabilize long bone fractures in ruminants. The Canadian veterinary journal= La revue veterinaire canadienne, 59(6), 635-641.
ですね。

論文

それでは早速、abstract を和訳してみます。

Transfixation pin casts (TPC)は反芻獣の骨折を治療するのに適しているだろう。この回顧的研究では反芻獣の骨折に対してTPCを用いて治療した骨折部位、合併症、そして結果的について調査している。牛25頭、山羊7頭、そして羊7頭の長骨骨折に対してTPCを用いて治療を実施した。長期の治療成績については畜主への電話により聞き取り調査を実施した。31頭(79%)は無事に外固定を除去し、退院した。主な合併症はピンホールに認められた骨炎と骨の不使用性骨減少症であった。死亡もしくは安楽殺となった合併症は骨髄炎、癒合不全、そしてピンホールからの骨折であった。患畜の体重が重くなるに従い予後が悪化した。牛では山羊や羊に比較し死亡リスクが低かった。長期の治療成績は20例で得ることができ、内17例は元の使役に復帰し、12例では後遺症としての跛行は認められなかった。

以上で和訳引用終了ですね。

長骨骨折が8割治癒しているということで、かなり良好な成績だと思います。

日本では、創外固定の発表や論文をみたことがありますが、
TPCについてはどうなんでしょう??
創外固定も固定器具を用いているものや、キャストは使用しないものなんかもあるようですので、いまいち用語の統一は進んでいないのでしょうか??

日本国内での様子も今後調べてみたいですが、それはまた別の機会に。

牛では山羊や羊に比較し良好な予後だったようで、面白い結果です。
私自身の感覚でも牛は馬に比較してかなり優秀な整形外科患畜と言えると思います。
暴れまわることはほとんどなく、よく寝てくれる。
明らかに馬よりも協力的ですね。

現在、勤務している病院では、牛の骨折に対しても内固定を選択しています。
これはキャストで直せないと判断された牛が主に搬入されるため、このような結果になっています。
そのため、主な治療対象の骨折部位は橈骨、上腕骨、脛骨、そして大腿骨になると思います。

今回の論文を読んだことで、
馬用にTransfixation pinを導入しましたが、牛に対しても応用することが可能だと知ることができました。よく勉強して、牛の骨折に対する治療の幅を広げていきたいと思います。主なTPCの対象としては橈骨遠位、中手骨、そして中足骨かなと考えています。

まとめ

TPCでは80%が無事に退院することができると報告されています。
このことから反芻獣においてもTPCは骨折治療に有用であったと言えると思います。
今後、牛の骨折に対してもTPCを行えるように準備していきます。




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