はじめに
今回の記事でもレポジトリーとは関連性の低い内容になります。もし、興味がありましたら読み進めてみてくださいね。
内容としては繁殖分野です。
子宮頸管裂創
子宮頚管裂創については主に再建術を実施した際の成績について報告される場合が多く、これまでに手術を実施されなかった繁殖雌馬の診断後の繁殖成績については記載が少ないと思います。
子宮頚管の裂創は繁殖能力の低下を引き起こすことがこれまでにFossら (1994)により示されています。この原因としては子宮頚管の閉鎖不全(Brown 1984)、子宮内への持続的な細菌感染(1979)が考えられていますね。
子宮頸管裂創が認められた繁殖牝馬の繁殖成績;保存療法
今回の調査では子宮頚管の損傷と診断されたサラブレッド種繁殖牝馬31頭について、その診断後の繁殖成績を調査しました。診断は触診±内視鏡検査により行いました。子宮頚管裂創と診断された繁殖牝馬はその損傷部位および損傷範囲により分類しました。
裂創部位により2群に分類しました。裂創が4−8時方向に認められたV-group、もしくは裂創が2−4時/8−10時方向に認められたL-groupと定義しています。
また、損傷範囲による分類も実施しました。損傷範囲が1時間未満(15°未満)はGrade 1、損傷範囲が1時間以上(15°以上)のものはGrade 2と定義しました。
診断後3年間の繁殖成績は下記に示す結果になりました。
全体の48.4%(15/31)では3年間で1頭も産駒を得ることができませんでした。
16.1%(5/31)では3年間で1頭の産駒、22.6%(7/31)は2頭の産駒、12.9%(4/31)では3年間で3頭の産駒を得ることができました。
V-groupには16頭の繁殖牝馬が分類されました。
このgruopでは10頭では3年間で1頭以上の産駒を得ることができました。6頭では産駒を得ることができませんでした。
L-groupには11頭の繁殖牝馬が分類されました。
このgroupでは5頭は3年間で1頭以上の産駒を得ることができました。6頭では産駒を得ることができませんでした。
Grade1には16頭の繁殖牝馬が分類されました。
この群内では13頭で3年間に1頭以上の産駒を得ることができました。3頭では1頭も産駒を得ることができませんでした。
Grade2には15頭の繁殖牝馬が分類されました。
この群内では3頭で3年間に1頭以上の産駒を得ることができました。12頭では3年間で1頭も産駒を得ることができませんでした。
Grade1で1頭も産駒を得られなかった3頭はいずれも診断前の5年間で3年以上の不受胎が認められました。
Grade2で診断後に産駒を得ることができた3頭はいずれも2年間以上の不受胎期間が認められました。
これまでの結果より、子宮頚管裂創は繁殖雌馬のその後の繁殖能力に影響を与えることが推察されました。
Grade 1の子宮頚管裂傷では、多くの場合、繁殖能力に与える影響は限定的であったと考えられます。
Grade 2の子宮頚管裂創では、繁殖雌馬としての繁殖能力は著しく低下したと考えらレます。Grade 2の子宮頚管裂創と診断された繁殖牝馬では外科手術を含めた積極的な治療が必要であると考えています。子宮頚管裂創に対する再建術後の受胎成績は62.5-75.3%と報告されており、繁殖成績の向上が期待できると考えています。
まとめ
今回の調査結果より15°以上の子宮頚管裂創を診断された繁殖雌馬は外科手術を含めた積極的な治療が必要だと考えられました。そのためにも早期に適切な診断が必要となると思います。
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