はじめに
仔馬の感染性関節炎は比較的頻繁に認められる疾患の1つですね。多くの症例では治癒しますが、中には予後不良となってします症例もあります。
今回は仔馬の感染性関節炎に関する論文を読んでみたので、
その論文を紹介してみたいと思います。
論文
今回、紹介する論文は
Bacterial isolates, antimicrobial susceptibility patterns, and factors associated with infection and outcome in foals with septic arthritis: 83 cases (1998-2013)
Hepworth-Warren et al. 2015
JAVMA 246; 785-793. 2015
ですね。
それではAbstractの和約を紹介しますね。
目的;180日齢未満の感染性関節炎の仔馬における臨床的な特徴、臨床病理学データ、原因菌およびその抗生剤に対する感受性について明らかにすること。
研究デザイン;回顧的調査
対象動物;感染性関節炎と診断された83頭の仔馬
方法;2つの教育病院での医療記録について調査した。調査対象年は1998年から2013年。調査対象とした動物は180日齢未満の仔馬であり、1つ以上の関節において感染性関節炎と診断されたものである。医療記録より症状、臨床病理学的情報、細菌培養の結果と感受性、そして、治療成績について抽出した。集積したデータでは、すべての仔馬についてそれぞれを1頭としてカウントし、仔馬はその日齢により3つのグループに分類した。(7日齢未満、8から30日齢、30から180日齢)
結果;調査対象馬の平均日齢±SDは18.2±25日齢(日齢の幅は0から180日齢)であった。感染性関節炎と診断された1頭当たりの関節数は平均2関節(1関節から10関節)。47/83 (56.6%)は生存し、無事に退院した。70の関節液において細菌培養を実施し、60 (85.7%) の関節液において有意な菌が培養された。72の細菌が分離、同定された。45 (62.5%)はグラム陰性菌、27 (37.5%)はグラム陽性菌であった。生存率は血清中フィブリノーゲン値と正の相関があり、感染性関節炎と診断された関節数と負の相関が認められた。
結論;本研究の結果より、どのような細菌が仔馬の感染性関節炎の原因菌となり得るのかを特定できた。これは今後の臨床現場において非常に有用な情報となり得る。また、生存率と血清中フィブリノーゲン値が正の相関を認めることが明らかになったことで、予後について予測する情報が増加した。
本研究では仔馬の感染性関節炎を対象に2つの大学病院における医療記録を回顧的調査を行ったものですね。
本研究では感染性関節炎の定義として、以下の条件のうち、1つ以上の条件を満たすものとしています。
- 採取した関節液より細菌培養され同定、分離されたもの。
- Total uncleated cell count が30000cells/ulであるもの。
- 化膿性もしくは線維性の炎症が関節内に認められたもの。
生存できた仔馬では平均の感染関節数が1(1-8)でありました、生存できなかった仔馬では平均の感染関節数が3(1-10)となりました。
この結果は実際に臨床現場で感じている多発性感染性関節炎では予後が悪いという予測と一致していると思います。
原因菌が80%で同定できたことは驚きの結果となりました。
私の勤務先では、なかなか感染性関節炎の原因菌を同定できません。これは、2次診療施設である私の勤務先に来院した症例では、来院に先立ち抗生剤が投与されているためだと考えられます。
今後は1次診療を行なっている獣医師とも協力し、日本国内における感染性関節炎の原因菌特定について研究が進めば良いと考えています。
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