今回の記事では、1歳馬のせりにレポジトリーとして提出されたX-rayを調査し、X-ray所見と競走成績の関係について検討した論文を紹介します。
Miyakoshiらによって行われたこの調査は日本国内の1歳馬のせりに提出されたレポジトリーを調査対象として研究が行われました。
この論文はJournal of Veterinary Medical Science に掲載されています。
それではまず、Abstract を日本語訳してみます。
"この論文の目的は1歳馬市場に提出されたX-rayにおける異常所見と2-3歳時の出走率の関係について評価することである。
1歳馬市場に提出された1082頭のX-rayのうち、腕節852頭分、前肢球節1055頭分、飛節976頭分、そして後肢球節1031頭分について所見を診断し、評価した。
1082頭中82頭 (7.2%) が2-3歳時に出走することができなかった。
足根骨の破砕/変形(飛節)、第三中足骨矢状稜の欠損(後肢球節)、そして第一趾骨近位背側の骨片(後肢球節)の3つの所見が認められた馬では対照群に比較し、有意に低い出走率を示した。
上記の3つのX-ray所見のうち1つ以上が認められ、不出走であった馬の後追い調査についても実施した。該当馬は12頭であり、12頭のうち理由が不出走の原因が判明した9頭ではそれぞれのX-ray所見は不出走の直接の原因とはなっていなかった。
不出走の原因は骨盤骨折(2頭)、第三指骨骨折(1頭)、腰萎と種子骨骨折の併発(1頭)、浅屈腱炎(2頭)、喉頭片麻痺(1頭)、馬主の経済問題(2頭)であった。
本調査では3つの異常所見が低い出走率と相関関係が認められたものの、それらの所見は必ずしも不出走の原因とはなっていないことが明らかになった。”
つまり、
- 足根骨の破砕/変形(飛節)
- 第三中足骨矢状稜の欠損(後肢球節)
- 第一趾骨近位背側の骨片(後肢球節)
この3つの所見が認められた馬の出走率は低かった。
ただし、なぜ出走できなかったのかまで聞き取り調査をすると、
これらの3つの所見は出走できなかった原因ではなかった
ということですね。
この論文では、
X-ray所見だけで、
将来の競走成績について予測することは非常に困難だ
と論文中でも述べています。
つまり、統計的に競走成績に影響を与える所見を見つけられても、本当にその馬に影響を与えるのかはわからない
というのが本音だと思われます。
このようなX-ray所見と競走成績の関連についての調査はこれまでにも論文とされてきています。
そして、
各論文によりそれぞれ結果が異なる所見も存在しています。
このような事実から、論文の結果をそのまま鵜呑みにするのではなく、
実馬の臨床症状等を加味して柔軟に判断していく必要があると考えています。
本論文は
”Miyakoshi, D., Senba, H., Shikichi, M., Maeda, M., Shibata, R., & Misumi, K. (2017). A retrospective study of radiographic abnormalities in the repositories for Thoroughbreds at yearling sales in Japan. Journal of Veterinary Medical Science, 79(11), 1807-1814.”
になります。
興味がある方はぜひ原文を読んでみてください。
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