要約
腕節、尺側手根骨の円形透亮像が1歳馬のレポジトリーで頻繁に認められます。ただ、これは骨嚢胞とは異なりますので心配いりません。問題となることはまずありません。副手根骨の骨折が認められるのは非常に稀です。評価は難しいですが、臨床症状をよく把握することが大切だと考えています。はじめに
レポジトリーに提出されるX-ray画像において腕節、尺側手根骨の円形透亮像は比較的認められることの多い所見です。尺側手根骨の円形透亮像は骨嚢胞や骨髄炎と誤解される場合もありますが、関係がありません。
副手根骨の骨折が認められることは非常に稀です。しかもレポジトリーとしてX-rayを撮影されているケースでは臨床症状を示していない場合がほとんどです。
副手根骨の骨折が認められることは非常に稀です。しかもレポジトリーとしてX-rayを撮影されているケースでは臨床症状を示していない場合がほとんどです。
尺側手根骨の円形透亮像
図の矢印で示しているのが尺側手根骨の円形透亮像になります。黒い小さな円形がお判りいただけると思います。
腕節の背内側を狙ったショットで確認することが可能です。
正直、この所見がどのような機序により形成されるのか?については知識がありません。
臨床上問題となることがないため、興味がないというのが本音です。
日本国内の1歳馬を調査したMiyakoshiらの報告 (2017)ではこの所見の発生率は、12.8% (109/853)と示され、多くの馬で認められる所見ですね。
アメリカでは20.1% (227/1130) (Kane et al. 2003)、オーストラリアでは22.2% (534/2401) (Jackson et al. 2009)の割合で1歳馬のレポジトリー提出資料でこの所見が認められることが報告されています。
つまり、この所見の発生率は10-25%程度と予測され、比較的、一般的なレントゲン所見であると言えます。
つまり、この所見の発生率は10-25%程度と予測され、比較的、一般的なレントゲン所見であると言えます。
気になる競走成績への影響についてですが、上記の各論文の結果を確認してみましょう。
日本国内の調査 (Miyakoshi et al. 2017)では、2-3歳時の出走率との関連性について調査されています。調査の結果、この所見が認められた馬では出走率が有意に高いことが明らかになりました。(所見あり; 出走率; 98.2% vs 所見なし; 出走率; 91.3%, P=0.007)
アメリカでの調査 (Kane et al. 2003) では、出走率に加えて、出走した馬については入着率、獲得賞金、1回走行あたりの獲得賞金についても調査しています。アメリカにおける調査の結果、この所見は全ての調査項目に影響を与えませんでした。
オーストラリアの調査 (Jackson et al 2009) では出走率に加えて、入着回数、入着率について検討を行なっています。その結果、尺側手根骨の透亮像が認めらる馬では2歳時、そして3歳時のいずれの期間でも出走した割合がこの所見が認められない馬に比較し有意に高いと報告されています。ここでもこの所見が高い出走率と統計的な関連性を示しました。 (所見あり; 出走率; 41.6% vs 所見なし; 出走率; 35.7% P=0.01)
本来、レポジトリーに提出されたレントゲンに関する調査は、レントゲン所見は将来の競走成績に影響を与えないだろうという仮説、もしくはあるレントゲン所見は将来の競走成績に負の影響を与えるだろうという仮説を元に研究されています。
しかし、この尺側手根骨の円形透亮像については競走成績に正の影響を与えるという予期していない結果が得られており、正直、判断に苦しみます。
ただし、この所見と出走率について関連性があったとしても、実際にこの所見が認められた馬のみを購買対象とするのは賢明な判断とは言えないと思います。
この所見については気にしないのがもっとも正解と考えています。
図の黒矢印が副手根骨の骨折線になります。逆S字に骨折線が認められるのがわかると思います。
私はこの所見は骨折と診断していますが、獣医師によっては骨折ではないと考えている人もいます。そのため、アドバイスする獣医師によっては異なる診断名がついているかもしれません。
副手根骨は近位種子骨などと同様に腱や靱帯の繋ぎ目的な役割をしているようです。
骨折後の治癒も近位種子骨に近いのか、保存療法の場合、子馬を除き骨折線が閉鎖することはありません。そのため、治癒過程を判断するためにはX-rayよりも臨床症状が重要だと考えています。
レポジトリーを撮影されている馬は基本的にはセールに上場予定の馬であり、著しい跛行を呈する馬は含まれていません。
そのため、レポジトリーで見つかるこの所見は偶発的に発見される所見であり、過去の副手根骨の骨折を示しており、臨床症状がなければ、現状では問題がない可能性が高いと考えています。
1歳馬における詳細な情報では、
日本国内の1歳馬を調査したMiyakoshiらの報告 (2017)ではこの所見の発生率は、0.2% (2/853)と示され、レポジトリーでは非常に稀に認められることがわかります。
アメリカでは0.4% (4/1130) (Kane et al. 2003)の割合で1歳馬のレポジトリー提出資料でこの所見が認められることが報告されています。
つまり、この所見の発生率は1%未満と予測され、非常に稀な所見であると考えられます。
気になる競走成績への影響についてですが、上記の各論文の結果を確認してみましょう。
日本国内の調査 (Miyakoshi et al. 2017)では、2-3歳時の出走率との関連性について調査されています。2頭のうち1頭は出走しましたが、1頭は出走しませんでした。そのため、出走率は50%ですね。
アメリカでの調査 (Kane et al. 2003) では、出走率に加えて、出走した馬については入着率、獲得賞金、1回走行あたりの獲得賞金についても調査しています。アメリカにおける調査の結果、この所見が認められた4頭全てが出走したと報告されています。入着率、獲得賞金、そして1回走行あたりの獲得賞金についてはこの所見と関連性が認められなかったと報告されています。
このような結果からレポジトリーで認められたこの所見はそれほど心配する必要がないと考えられます。ただし、ここに示した論文ではいずれも症例数が少ないため、より多頭数における論文が公表されるとさらにはっきりとした結果が得られるかもしれません。
・尺側手根骨の円形透亮像は評価の際には気にしなくて良い
・副手根骨の骨折像は臨床症状がなければ、予後が良好な可能性高い
(ただし、レポジトリーで認められたものについて)
と考えています。
オーストラリアの調査 (Jackson et al 2009) では出走率に加えて、入着回数、入着率について検討を行なっています。その結果、尺側手根骨の透亮像が認めらる馬では2歳時、そして3歳時のいずれの期間でも出走した割合がこの所見が認められない馬に比較し有意に高いと報告されています。ここでもこの所見が高い出走率と統計的な関連性を示しました。 (所見あり; 出走率; 41.6% vs 所見なし; 出走率; 35.7% P=0.01)
本来、レポジトリーに提出されたレントゲンに関する調査は、レントゲン所見は将来の競走成績に影響を与えないだろうという仮説、もしくはあるレントゲン所見は将来の競走成績に負の影響を与えるだろうという仮説を元に研究されています。
しかし、この尺側手根骨の円形透亮像については競走成績に正の影響を与えるという予期していない結果が得られており、正直、判断に苦しみます。
ただし、この所見と出走率について関連性があったとしても、実際にこの所見が認められた馬のみを購買対象とするのは賢明な判断とは言えないと思います。
この所見については気にしないのがもっとも正解と考えています。
副手根骨の骨折
図の黒矢印が副手根骨の骨折線になります。逆S字に骨折線が認められるのがわかると思います。
私はこの所見は骨折と診断していますが、獣医師によっては骨折ではないと考えている人もいます。そのため、アドバイスする獣医師によっては異なる診断名がついているかもしれません。
副手根骨は近位種子骨などと同様に腱や靱帯の繋ぎ目的な役割をしているようです。
骨折後の治癒も近位種子骨に近いのか、保存療法の場合、子馬を除き骨折線が閉鎖することはありません。そのため、治癒過程を判断するためにはX-rayよりも臨床症状が重要だと考えています。
レポジトリーを撮影されている馬は基本的にはセールに上場予定の馬であり、著しい跛行を呈する馬は含まれていません。
そのため、レポジトリーで見つかるこの所見は偶発的に発見される所見であり、過去の副手根骨の骨折を示しており、臨床症状がなければ、現状では問題がない可能性が高いと考えています。
1歳馬における詳細な情報では、
日本国内の1歳馬を調査したMiyakoshiらの報告 (2017)ではこの所見の発生率は、0.2% (2/853)と示され、レポジトリーでは非常に稀に認められることがわかります。
アメリカでは0.4% (4/1130) (Kane et al. 2003)の割合で1歳馬のレポジトリー提出資料でこの所見が認められることが報告されています。
つまり、この所見の発生率は1%未満と予測され、非常に稀な所見であると考えられます。
気になる競走成績への影響についてですが、上記の各論文の結果を確認してみましょう。
日本国内の調査 (Miyakoshi et al. 2017)では、2-3歳時の出走率との関連性について調査されています。2頭のうち1頭は出走しましたが、1頭は出走しませんでした。そのため、出走率は50%ですね。
アメリカでの調査 (Kane et al. 2003) では、出走率に加えて、出走した馬については入着率、獲得賞金、1回走行あたりの獲得賞金についても調査しています。アメリカにおける調査の結果、この所見が認められた4頭全てが出走したと報告されています。入着率、獲得賞金、そして1回走行あたりの獲得賞金についてはこの所見と関連性が認められなかったと報告されています。
このような結果からレポジトリーで認められたこの所見はそれほど心配する必要がないと考えられます。ただし、ここに示した論文ではいずれも症例数が少ないため、より多頭数における論文が公表されるとさらにはっきりとした結果が得られるかもしれません。
まとめ
・腕節、尺側手根骨の円形透亮像はレポジトリーで頻繁に認められる所見の1つ・尺側手根骨の円形透亮像は評価の際には気にしなくて良い
・副手根骨の骨折像は臨床症状がなければ、予後が良好な可能性高い
(ただし、レポジトリーで認められたものについて)
と考えています。
参考文献
下記に参考文献を示します。興味を持たれた方はぜひ原文を読んでいただければ幸いです。
Kane, A. J., et al. "Radiographic changes in Thoroughbred yearlings. Part 1: Prevalence at the time of the yearling sales." Equine Veterinary Journal 35.4 (2003): 354-365.
Kane, A. J., et al. "Radiographic changes in Thoroughbred yearlings. Part 2: Associations with racing performance." Equine veterinary journal 35.4 (2003): 366-374.
Jackson, Melissa, et al. "A prospective study of presale radiographs of Thoroughbred yearlings." Rural Industries Research and Development Corporation. Publication 09/082 (2009): 09-082.
Miyakoshi, Daisuke, et al. "A retrospective study of radiographic abnormalities in the repositories for Thoroughbreds at yearling sales in Japan." Journal of Veterinary Medical Science 79.11 (2017): 1807-1814.
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