馬のTransfixation Casting (Lescun et al. 2007)

はじめに

Transfixation Pin Cast については過去の記事でも触れています。
今回は馬でのTransfixation Pin Castについての論文を紹介しようと思います。

今回、紹介する論文は
Lescun, T. B., McClure, S. R., Ward, M. P., Downs, C., Wilson, D. A., Adams, S. B., ... & Reinertson, E. L. (2007). Evaluation of transfixation casting for treatment of third metacarpal, third metatarsal, and phalangeal fractures in horses: 37 cases (1994–2004). Journal of the American Veterinary Medical Association, 230(9), 1340-1349.
になります。

論文紹介


今回紹介する論文は、transfixation castingで治療を試みた第三中手骨骨折、第三中足骨骨折、そして指骨骨折、趾骨骨折の臨床所見、合併症、そして治療成績を明らかにすることを目的としています。

この論文の研究デザインは臨床症例の回顧的調査と記載されています。

この論文の調査対象は29例の成馬、8例の子馬です。全ての症例で第三中手骨、第三中足骨、、第一もしくは第二指/趾骨のいずれかの骨折が認められました。

この論文の研究では、症例の医療記録の調査と追跡調査を実施しています。集めたデータを用いて生存率、骨折部の治癒、使役への復帰、ピンのルーズニング、ピンホールの透亮像、ピンに関連する合併症について解析を実施しています。

全体では35例中27例(77%) で骨折の治癒が認められ、症例は生存した。内訳は第三中手骨/中足骨骨折の症例で15例中10例、第一指骨/趾骨骨折の症例で12例中11例、第二指骨/趾骨骨折の症例で8例中6例が骨折の治癒、生存が認められたと記載されています。
成馬4例でピンホールからの骨折が認められ、1例ではピンホールの感染から病的な単皮質骨折が認められたと記載されています。
重い体重、2つの関節に至る骨折、骨幹以外ので骨折、そしてX-ray画像上での癒合遅延は元の使役に復帰できない馬との関連が認められた。体重の影響を補正検討した結果、ピンルーズニングは骨幹でのピン挿入、ピンホールでの透亮像はtransfixation pinの挿入期間、ピンに関連する合併症は用手でのピン挿入とそれぞれ関連が認められた。

この論文の結果、腕節および飛節の遠位における骨折に対してTransfixation Castingでの治療は良好な結果を得ることができたと記載されています。
この手技は通常、第一指/趾骨の骨折に対して用いられますが、第三中手骨/第三中足骨、第二指/趾骨骨折に対しても用いることができることが明らかとなったと記載されています。

感想

この論文では第一/二指/趾骨骨折に対してだけでなく、第三中手/中足骨骨折に対してもTransfixation Pin Castを用いて治療しかなり高い治癒率を示している。特に第三中手/中足骨骨折での治癒率は66.7%と高く、これまで第三中手/中足骨での粉砕骨折は予後がよくないだろうと考えていたことを反省させられた。中には第三中手骨骨折の成馬が治癒している症例も含まれている。
開放骨折症例の中でも救命できている症例が含まれている。

Transfixation Pin Castについて勉強し、適応症例に対して実施できるよう準備しておきたい。




0 件のコメント :

コメントを投稿