はじめに
牛の骨折治療についての臨床獣医での特集論文3本目です。
に続いて今日ご紹介するのは、
「牛の全身麻酔」になります。
今回取り上げるのは、酪農学園大学、山下先生によって書かれた
『より安全で痛みのない獣医療を目指して〜骨折整復術を目的とした牛の全身麻酔〜』 臨床獣医 July 2018です。
全身麻酔の注意点
牛を横臥位または仰臥位に保定すると、噴門が液面下に沈んで発酵ガスを排出できずに第一胃鼓張を起こし、全身麻酔下では第一胃内容の逆流、さらに誤嚥性肺炎を起こす可能性があることが記載されており、このことが牛の全身麻酔を他の動物種よりも困難にしていると指摘しています。
全身麻酔での第一胃鼓張、第一胃内容の逆流、および誤嚥性肺炎の危険性があることが記載されており、これらの合併症のリスクを減少させるには、子牛で12-18時間の絶食、8-12時間の絶飲が必要であり、成牛では18-24時間の絶食、12-18時間の絶飲が必要となると記載されています。
新生子牛は、絶食は低血糖を引き起こすので推奨されないことも併せて記載されています。
全身麻酔
成牛ではキシラジン0.1-0.2mg/kg IV後にケタミン2mg/kg IV、子牛ではメデトミジン20ug/kg IV後にケタミン0.5mg/kg IVで麻酔導入できると記載されています。
成牛の気管挿管は、安全開口器を使い、口から喉頭部に手を入れ、喉頭を指で触りながら気管挿管する方法が紹介されています。
子牛では、伏臥位に保定し頭頸部をまっすぐに進展し、ブレードの長い喉頭鏡を用いて喉頭を確認し、スタイレットを入れた気管チューブで挿管する方法が紹介されています。
麻酔維持にはイソフルランもしくはセボフルランを用いることができ、体重が60kg未満の子牛では小動物用吸入麻酔器、体重が200kg未満の子牛ではヒト用吸入麻酔器を使用することが可能であると記載されています。
しかし、250kg以上の牛では大動物用吸入麻酔が必要となると記載されています。
感想
この論文では牛の全身麻酔についてその方法と注意点について詳細に記載されていました。全身麻酔では主に吸入麻酔について紹介されており牛の整形外科手術でも吸入麻酔の有用性が高いと思います。
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