Transfixation Cast を使った遠位指/趾関節固定術 (Easter et al. 2011)

はじめに

Transfixation Pin Cast についての論文紹介です。
これまでに
「馬のTransfixation Casting」
「馬のModified Transfixation Pin Cast」
について紹介しました。

今回はTransfixation Castを使い、遠位指/趾関節の関節固定術を実施した論文です。
感染性関節炎により関節固定適応となった症例では、プレートや螺子などを用いて内固定を実施しても内固定に使用したプレートや螺子も感染してしまうリスクが高く感染固定は困難です。今回のご紹介する症例報告ではこのような感染性関節炎により疼痛がコントロールできなくなった症例を対象に関節固定術を実施しています。

今回、ご紹介する論文は、
Easter, J. L., Schumacher, J., & Watkins, J. P. (2011). Transfixation cast technique for arthrodesis of the distal interphalangeal joint of horses. Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology, 24(01), 62-67.
になります。


論文紹介

この論文は遠位指/趾関節の感染性関節炎により慢性的な跛行を呈した3歳牝馬および1歳牝馬に対して繁殖供用を目的としてTransfixation Cast を利用した関節固定術を実施した症例報告です。
今回、この論文で用いた関節固定術の方法はこれまでに用いられた方法と異なり関節内にインプラントを挿入する必要がありませんでした。
このことが良好な予後を得ることに貢献したと記載されています。


具体的にどのような関節固定術を実施したのか?

いずれの対象例も前肢の遠位指関節の感染性関節炎による慢性跛行のため関節固定術が選択されました。第三中手骨骨幹部に2本のTransfixation Pinを挿入します。
蹄壁に円鋸を用いて造孔し、遠位指関節を露出、関節面をドリリング、キュレットでの軟骨掻爬を実施。その後、隙間にPMMAと海綿骨を充填する方法です。
最後にハーフリムキャストを装着し、Transfixation Pin Castにしています。

1歳雌馬の症例は手術後の経過は良好だったものの、半年後に疝痛が原因で安楽殺となったと記載されています。3歳雌馬の症例は、術後軽度な跛行が残存したものの繁殖牝馬として供用、2年後に近位指節間関節の関節固定術を受け、その後も繁殖雌馬として供用されていると記載されています。


感想

感染性関節炎に継続する慢性跛行は改善が難しいと感じています。特に関節面の骨変化が認められる症例では慢性跛行となるリスクが高いです。
今回の論文では、このような感染性関節炎からの関節症に対する有用な治療方法の提案がなされています。
Transfixation Pin Castを用いて、インプラントを用いずに関節固定する、この方法は僕の思いつかない斬新な方法でした。
対象症例は限られますが、この方法を知ることができたことは大きな収穫です。

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