馬の難産;頸と前肢の屈曲位

はじめに

繁殖シーズンも深まり、すでに何例かの馬の難産症例に遭遇してます。
先日は破水から1時間経過しても娩出されない難産症例が来院。
往診で診察した先生からは、
「胎子の後頭部しか触れない」
との情報です。

枠場での検査

来院時の枠場での触診では、想定よりも難しい症例ではないと判断しました。
頭部が腹側に変位し、前肢は両前肢共に屈曲している状態です。
教科書での記載では
Ventral deviation of the head & bilateral carpal flexionになりますね。
ちなみに図で示すと下記のような図になります。
Power Pointで書いたので上手くはありません。



後肢吊り上げでの整復

頭や頸の失位は立位ではなかなか整復が難しく、子宮損傷のリスクが高いので全身麻酔、後肢吊り上げでの整復を選択しています。

海外の馬病院では、難産で来院する症例は頭や頸の失位がもっとも多いと報告されています。それだけ、よく遭遇する難産であり、牧場での整復は難しい失位なのでしょう。

静脈麻酔下で後肢吊り上げ、子宮弛緩のためのリトドリンを投与し、整復開始。
教科書に記載があるように頭と両腕節の失位の場合は頭を先に整復。順番を間違えると後々、ドツボにハマるようです

幸い、胎子の鼻先に右手が届いたので、左手で胎子の後頭部を思い切り子宮内に押し込みながら右手で鼻先を手前に引き出します。この際、子宮損傷を起こさないように鼻先を右手のひらでしっかりガードしておきました。
胎子の鼻先に手が届かない場合は、先に頸にチェーンを掛け手前に引っ張ってから鼻先を把持する必要があります。

後は、両前肢の屈曲を整復するだけ、こちらも頭と同様に、蹄先を把持し、腕節を押し込みながら蹄を手前に引き出すことで整復。この際も蹄先を掌でガードし子宮を損傷しないよう注意です。

まとめ

今回の症例では、
・頭の失位は子宮損傷のリスクが高いので可能なら全身麻酔
・鼻先を把持、後頭部を押し込み整復
・頭部の屈曲と腕節屈曲の両方がある場合、整復は頭から
を再確認しました。






0 件のコメント :

コメントを投稿