はじめに
前回のTransfixation castingの記事に続いて今回はModified Transfixation Pin Castについての論文を紹介してみたいと思います。今回、紹介する論文は下記の論文です。
Rossignol, F., Vitte, A., & Boening, J. (2014). Use of a modified transfixation pin cast for treatment of comminuted phalangeal fractures in horses. Veterinary Surgery, 43(1), 66-72.
今回の論文は2014年に報告された比較的新しい論文です。
これまでの方法とは少し違った方法でTransfixation Pin Castを実施し、良好な成績を得ている論文で非常に参考になりました。
それでは論文を紹介します。
論文紹介
今回紹介する論文の目的は患畜を仰臥位にし、患肢を吊り上げることを利用し骨折整復を実施、Transfixation Pinは第三中手/中足骨の骨端遠位および遠位の骨幹端に挿入し、Pin Castを実施するModified Transfixation Pin Cast の手技を報告すること、およびこの方法を用いて治療を実施した成馬11症例の治療成績を報告することであると記載されています。
この論文の研究デザインは症例報告です。
この論文での対象症例は第一、第二指/趾骨の粉砕骨折です。
症例馬は全身麻酔下で仰臥位に保定した。指骨/趾骨の粉砕骨折は蹄にケーブルを掛け牽引することで整復した。螺子での内固定が可能な症例では実施した。Transfixation Pinは2本の6.3mm 中央にスレッドが切ってあるTransfixation Pinを使用した。挿入部位は第三中手/中足骨骨端遠位の窪みの中心もしくはわずかに近位に1本、1本目より3-4cm近位の骨幹端遠位に2本目のTransfixation Pinを挿入した。その後、キャスティング剤を使い、Transfixation Pin Castとした。
この研究では11例の症例が対象です。このうち9例は前肢、2例は後肢の骨折症例です。挿入したPinは少なくとも6週間は維持しました。6-8週後のPin抜去時にPinのルーズニングが認められた症例はなかったと記載されています。ポニーの1症例は近位のピン穴から第三中手骨骨折が認められました。11症例中9例は生存しました(生存率82%)。遠位のPinは球節に非常に近い位置にありましたが、手術後に感染性関節炎を発症した症例はいませんでした。
この論文の結論としては、Modified Transfixation Pin CastはPinが長持ちであり、ピン穴からの骨折やピンのルーズニングの合併症の発生を減ずることができると記載しています。
感想
この方法はこれまでのTransfixation Pin Castとは異なる方法で、良好な成績を示していると思います。この方法はこれまでの方法に比較して手技が容易というのも大きなメリットの1つです。第三中手骨、第三中足骨の中心へのドリリングは中手骨、中足骨の縦骨折に対する内固定手術で頻繁に実施している手技なので手技的には経験が活かせます。今回の方法は第一もしくは第二指骨/趾骨の骨折への治療方法となりますが、準備しておきべき方法だと感じています。
0 件のコメント :
コメントを投稿