はじめに
今シーズンは繁殖牝馬の子宮動脈破裂症例が昨シーズンに比較し少ないように思います。
それでも子宮動脈破裂は周産期の繁殖牝馬の主要な死亡要因の1つです。
今回の記事では、子宮動脈破裂について勉強していきたいと思います。
病因
子宮動脈破裂の発症馬では非発症馬に比較し、血中の銅濃度が低いとの報告があり、血中の低銅濃度は血管壁の脆弱性に影響を与える可能性が示唆されている。
子宮動脈破裂は分娩前、分娩中そして分娩後に発生するが、分娩後24時間以内が最も発生しやすい時間帯である。
難産後の繁殖牝馬では可視粘膜や心拍数に注意が必要である。可視粘膜は時間とともに変色し、最終的には青白くなる。心拍数は上昇し、時には140回/分を示すこともある。
直腸検査により広間膜内に形成された血腫を触知することが可能だが、触知により疼痛を示し、場合によっては高血圧により血腫が破綻することも考えられる。
腹腔のエコー検査および腹腔穿刺は診断の際に有用である。
積極的に治療を行うべきか、保存的な治療がより有効なのか議論の余地がある。
ただし、開腹手術による止血は良い結果を得られず、禁忌である。
保存治療
舎飼いでは暗く、静かな馬房にて行うべきである。
仔馬は母馬を静かな環境に置くために隔離することもできる。
鎮静剤の投与は禁忌である。特にアセプロマジンは投与してはならない。これは鎮静剤の投与により低血圧によるショック症状を示すリスクがあるためだ。
保存療法での目的は血圧の低下により血栓が出血部位を覆わせることである。
積極的な輸液療法
2-3Lの高張食塩水の投与とその後に10-20Lの等張乳酸リンゲル液の投与を2-4時間で行う。
高張食塩水の代わりとしてヘタスターチもしくは血漿の投与も可能である。
Htが15%を下回るようであれば輸血を検討する。(6-8L)
フルニキシメグルミン
1.1mg/kgで投与。炎症反応を抑制する。また繁殖牝馬の疼痛を軽減。
オキシトシン
10-20IUの低用量投与。子宮を収縮させ、子宮の重量を減じることで広間膜へのテンションを軽減し、出血を抑制。高用量では疝痛症状を引き起こし、血圧上昇のリスクがあるため使用してはならない。
広域抗生剤
再還流障害による損傷および血腫への二次的な感染を予防するために投与。
アミノカプロニックアシド
人間では止血作用が認められているが、馬の急性動脈出血に効果があるかは疑問。
Naloxone(8mg)
1ショットでの効果が寓話的に報告されている。
しかし、小動物での報告であり、馬において効果があるのか不明。
Formaline
伝統的には10%での使用が推奨されてきたが、近年の報告では止血効果が全くないことが示されている。使用すべきではない。
感想
僕は子宮動脈破裂を疑う場合には、主に超音波検査にて腹腔内出血を確認することが多いです。腹腔内貯留液を腹腔穿刺し回収、腹腔内に血液が貯留していることを確認して診断としています。
治療方法は難しいかなと考えています。
鎮静剤の使用は今後より慎重に使用していきたい。
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