まとめ
妊娠繁殖雌馬に対してライトコントロールを実施することで・妊娠期間の短縮
・娩出子馬の増大
・娩出子馬の被毛↓
と行った効果を示すことが明らかになった。
はじめに
今回、紹介する論文は妊娠繁殖牝馬に対するライトコントロールの論文になります。これまでに、妊娠繁殖牝馬に対してライトコントロールを実施し、妊娠期間の短縮効果があることが学会報告されています。今回の論文では、この妊娠期間に加え、妊娠繁殖牝馬の分娩した新生子馬についても調査を実施しています。
今回紹介するのは下記の論文です。
Artificially extended photoperiod administered to pre-partum mares via blue light to a single eye: Observations on gestation length, foal birth weight and foal hair coat at birth.
(Nolan et al. 2017)
それではSummaryの和訳になります。
それではSummaryの和訳になります。
季節繁殖動物では、光周期の影響が重要な生理学的イベントのタイミングに対して決定的な要因となる。馬においては、長い明期が排卵と発情期の開始、冬毛の成長、そして分娩時期に影響を与える。3つの研究から構成されるこの論文は、全体では3繁殖シーズン、2カ国で研究を実施し、人工的に明期を延長することが、分娩期間、新生仔馬の体重、新生仔馬の被毛の程度にどのような影響を与えるのかについて示している。
【研究1】妊娠最終月のサラブレッド繁殖牝馬に対して人工的に明期 (124.8±15.11日) を延長することで、対照群と比較し、妊娠期間が統計学的に有意に短縮した (P < 0.05, 339.7±9.56 days vs 350.6±9.13)。
【研究2】 分娩予定日が早い分娩前の繁殖牝馬に対して人工的に明期 (104.6±9.89日) を延長することで、分娩時の新生仔馬の体重が対照群に比較し有意に増大した (47.13±2.93kg vs 43.51±6.14kg; P < 0.05)。
【研究3】 分娩前の繁殖牝馬に対して人工的に明期 (87.53±19.6日) を行い、分娩された新生仔馬では、対照群に比較し統計学的に有意に被毛が短い(0.34±0.20ug vs 0.59±0.12ug, 1.93±0.56cm vs 2.56±0.32cm) 。
まとめると、これらの研究により、分娩前の繁殖牝馬に対する季節変化による明期の長さは自然な繁殖時期での胎仔の成長に影響を与えていることが示された。妊娠後期に人工的に明期を延長することで、繁殖効率を改善する可能性が示された。これは繁殖シーズンにおいてより効果的であると考えられる。
感想
この論文は妊娠後期の妊娠雌馬に対して、ライトコントロール可能なマスクを用いて、ライトコントロールを実施した場合の臨床的なメリットについて記載されている。
これまで現場では、空胎馬に対して、性周期の動き出しを早くするためにライトコントロールが行われていた。
今回の論文により、妊娠期間の短縮、新生仔馬の体重の増加、さらに新生仔馬の被毛の減少効果が期待できると考えられる。これは臨床現場では非常に有用な情報だと考えられる。
主に、繁殖シーズンの早期の予定日の妊娠馬では妊娠期間の延長が認められることは、現場の感覚では知られており、問題の1つであると考えている。
この問題がライトコントロールにより予防できる可能性を示せたことは非常に有用だ。
また、牧場によっては妊娠期間が延長し気味で、生まれてくる新生仔馬が小さく、毛むくじゃらな新生仔馬が認められる割合が高いが、この理由も納得できる。
もちろん、単純に栄養が足りていないだけの場合もあるのだろうが・・・。
ただし、この論文でのライトコントロールの方法については詳細にしっておく必要がある。現在、国内で主に実施されているライトコントロールの方法はJRA日高育成牧場でご活躍された南保泰雄先生 (現、帯広畜産大学) が紹介した【12月20日 (冬至付近) から、明期14.5時間、暗期9.5時間の環境作成】である。
この方法に対して、今回の論文では、以下の点が異なっている。
1点目としては、ライトコントロールの開始時期であり、この論文では12月1日よりライトコントロールを開始し、翌年の5月まで継続した場合もある。
2点目としては、明期の時間設定で、12月1日の開始当初は南保先生が紹介している14.5時間の明期の設定であるが、自然光と同様に徐々に明期を延長し、最終的には16時間15分の明期を作成している。
これまでの方法と違いがあるので、同様の効果を期待する場合は、論文に則した方法でライトコントロールを実施した方がよいと考えられる。
実際に導入しても、すぐに期待した効果が得られないかもしれないが、正しい方法で複数年継続していけば、効果が実感できると思っている。
0 件のコメント :
コメントを投稿