牛の骨折;内固定手術 Vol.9;大腿骨骨折 Vol.2

まとめ

大腿骨骨折はプレート固定が推奨される

はじめに

前回の牛の骨折の記事では、Bovine OrthopedicsのPlates, Pins, and Interlocking Nailsの章から大腿骨骨折について勉強しました。

今回はBovine OrthopedicsのPlates, Pins, and Interlocking Nailsの章に記載されている大腿骨骨折の症例報告についての表について読み解いて行きたいと思います。

それでは早速、始めて行きたいと思います。

プレート固定

プレート固定については8本の論文、計55頭について示されています。多くの症例ではDCPで内固定が実施されていますが、中にはCondylar PlateやCobra Head Plateを用いて内固定を実施した症例も報告されています。

DCPでの内固定は2報の論文、計32頭で報告されています。このうち23頭(72%)で良好な予後が得られています。シングルプレートもしくはダブルプレートを実施していると記載されています。ダブルプレートの場合、頭側および外側にプレート載せることになります。


Condylar Platesでの内固定は1報の論文、8頭の症例で報告されています。このうち7頭(87.5%)で良好な予後が得られたと報告されています。


Cobra head plate での内固定は1報の論文、2頭の症例で報告されています。このうち1頭は良好な治癒が得られたと記載されています。もう1頭については手術後間欠的な痛みが継続していることが示されています。


他の論文については、使用しているPlateの詳細が記載されていないため、どのようなPlateか明らかではありません。


大腿骨骨折のプレート固定では、僕自身はCondylar PlateやCobra Plateを準備しておくのは難しいため、DCPで対応するのが良い選択かと考えています。

また、遠位よりの骨幹骨折の場合は、T-Plateが適切なインプラントだと思います。

僕自身はこれまで1例のみの経験で、その症例についてはLCPのT-plateを用いて内固定手術を実施しています。LCPのT-plate、ステンレス製のものは日本国内では販売がなく、今回は輸入品を用いているため手間とコストが掛かっています。

また、過去に先輩獣医師がT-plateを用いて大腿骨骨折に対して内固定手術を実施し、良好な結果を得ています。

仔牛の大腿骨は主に遠位よりで骨折することが多く、遠位に螺子を打つスペースが少ないため、T-plateでの内固定は有効だと思います。



Pins

Steinmann PinsもしくはIntramedullary Pinsでの大腿骨骨折の報告は6報あり、計26頭の手術について報告されています。
26例の手術結果です。1例では手術後の結果について記載がありませんでしたので、計25例の成績について記載します。
25例のうち13例で良好な成績を得ることができました。
そのため、52%の治癒率になります。
この成績はプレートでの内固定に比較する治癒率が低いことがわかります。



Nail

Kuntscher nailおよびIntramedullary nailでの内固定成績についても検討してみます。
これらのNailによる大腿骨骨折の内固定手術は7報の論文で報告され、計46例について記載されています。

46例中25例で良好な手術成績を得ることができ、治癒率は54%となります。こちらの成績もプレート固定に比較すると治癒率が劣ることがわかります。



まとめ

表から読み取るそれぞれの内固定方法による成績についてですが、PinやNailに比較しプレート固定の成績が良好なことがわかります。
このような結果から、牛の大腿骨骨折に対してはプレート固定を実施することを第一選択にすべきだと考えています。



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