はじめに
今回の記事では、後肢の浅屈腱脱位の症例について記載してみます。私はこれまでの2例ほどしかこの浅屈腱脱位に遭遇していません。
比較的稀な症例だと考えていますが、遭遇する際に備えて準備をしておこうと思います。
今回は浅屈腱脱位についてEquine Surgery 3rdを参考に、このような症例について学んでみます。
それではEquine Surgery 3rdの浅屈腱脱位についての章を和訳していきます。
保存療法
外側脱位は内側支帯の破綻、内側脱位は外側支帯の破綻により起こる。
患部は腫脹している場合が多く、触診による診断は難しい。しかし、運動中と静止中に患部を触診することで診断が可能である。超音波診断装置の使用も診断に有用である。
部分的、間欠的な浅屈腱の脱位は馬房内休養により治癒する。
補助療法としてはバンテージもしくはフルリムキャストが有用な場合もある。
休養は通常4−6ヶ月間必要である。
ここに記載されているように初診時に触診で診断するのは難しいと思う。これまでの症例においても初診時は飛節全体が腫脹しており、触診では判断が付きにくかったと記憶している。ただ、馬をゆっくりと歩かせながら触診すると判断しやすいようだ。
外科手術
臨床論文では保存療法によっても競技馬として良好な予後が得られると報告されているにもかかわらず、一般的には競技馬として復帰するためには外科的治療が必要だと考えられている。
ここに記載されている内容は重要な記載だろう。
この疾患は繁殖牝馬として供用する分には大きな問題とはならないと考えているし、実際にこの疾患を持ちながら繁殖雌馬として順調に供用されている症例もある。
競走馬としては保存療法では難しい。並足では跛行を示さなくなるものの、それ以上の運動強度では明らかな跛行を示すようだ。
この疾患は繁殖牝馬として供用する分には大きな問題とはならないと考えているし、実際にこの疾患を持ちながら繁殖雌馬として順調に供用されている症例もある。
競走馬としては保存療法では難しい。並足では跛行を示さなくなるものの、それ以上の運動強度では明らかな跛行を示すようだ。
患馬は横臥もしくは仰臥位にし、破綻している支帯にアプローチを行う。
支帯の断端をデブライドメントし、支帯の断端よりも離れた位置に水平マットレス縫合で糸を通す。破綻した断端はモノフィラメント吸収糸no.0にてマットレス縫合を行う。水平マットレス縫合に用いた糸を使用して外科用メッシュにて断端を減圧する。
支帯のほとんどが浅屈腱側に付着し、踵骨側にほとんど縫い代がない場合はスクリューをアンカーとして挿入し固定を行う。
縫合終了後、麻酔の覚醒時にはフルリムキャストを装着する。4−6ヶ月の休養が必要。
完全に脱位した症例での競技馬への予後はあまり期待できない。ただし、支帯が不完全断裂の場合は予後は良好である。
内側への脱位は外側への脱位に比較し予後が良好
これまでに経験した症例では、競走馬としての予後は悪い。保存療法を選択した症例しか経験がないが、すべてが速足で跛行を示し続けた。
繁殖用であれば、保存療法で飼養目的を達することができるだろうが、
競走馬としての予後を期待するのであれば、手術が必要だろう。
しかし、完全に脱位している症例では手術での予後も良好ではない事が示されている。
このため、手術に先立ち、十分に畜主と話合う必要がある疾患だろう。
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