牛の骨折;内固定手術 Vol. 10;脛骨骨折

はじめに
脛骨骨折は比較的よく遭遇する骨折だと思う。
僕もこれまでに遭遇した症例の中でももっとも多い症例なはずだ。

前回までに牛の骨折、大腿骨について、Bovine OrthopedicsのPlates, Pins, and Interlocking Nailsの章から勉強しました。

今回はBovine OrthopedicsのPlates, Pins, and Interlocking Nailsの章に記載されている脛骨骨折について勉強してみます。

それでは早速、始めて行きたいと思います。

脛骨骨折

仔牛では近位の骨端部での骨折、成牛では骨幹部での骨折がよく認められると記載されている。脛骨骨折では粉砕骨折が多いと記載されている。

仔牛で認められる近位骨端部周囲の骨折では、骨折線より近位の骨が小さく、内固定の実施は難しい症例も認められる。脛骨近位の骨折ではプレートを脛骨の内側に挿入する必要があるが、この部位では骨を覆う軟部組織が薄く、感染が起こりやすいので注意が必要である。

子馬の脛骨骨折でも同様なように、近位の骨端部での骨折の場合、近位に螺子を打つスペースが限られるため、通常のプレートを用いての固定は難しい。
近位のスペースが限られている場合の選択肢としては、T-plateを用いる、内側でのダブルプレート、プレートに加えスクリュー&ワイヤーの3つが考えられる。
いずれの方法を用いてもメリット、デメリットがあると思う。
T-plateを用いる場合、もっとも問題となるのは費用だろう。T-plateは高いため、治療費が高額となる。メリットは、近位の2-3本の螺子を挿入できる点となる。


内側でのダブルプレートでのメリットは近位に2-3本の螺子を挿入できる点、デメリットとしてはプレートを2枚使用するため経費が掛かる点に加えて、軟部組織の薄い、脛骨近位内側に2枚のプレートを挿入すると皮膚縫合は難しく、術創離開のリスクも高い点だろう。

プレート1枚とスクリュー&ワイヤーを用いることで近位に2本の螺子を挿入することができる。しかしながらこの方法は他の方法に比較し内固定の安定性が低いのがデメリットだと言えると考えている。

成牛での脛骨骨折は骨幹部に認められることが多い。これらの骨折に対する内固定手術報告はプレートもしくはKuntscher Nailで実施され良好な成績を得ている。しかし報告されている成牛の体重は軽いものがほとんどである。
Kuntscher Nailは使用したことがないし、準備もしていない。プレートは豊富に準備しているので、おそらくNailがなくとも対応可能だと思っている。


骨幹部の近位よりについてはRush Pinを用いて良好な予後を得たとの報告もある。しかしながら、Rush Pinが常に骨折部に安定を供給している訳ではない。変形や過剰な仮骨の形成が認められる場合もある。

脛骨遠位の骨端周囲での骨折は基本的に予後が悪い。これは遠位部を上手く固定するのが難しいためである。もし、治療を行うならばTransfixation Pinが効果を示すかもしれない。

脛骨遠位骨端部の骨折は遠位に螺子を打つスペースがほとんどないため、内固定は難しいように思う。Transfixation pin castの準備はしてあるので、螺子やプレートでアライメントを整復し、Transfixation pin castを実施する方法が選択肢になり得ると考えている。

脛骨骨折は仔牛であっても骨幹部で認められる場合が多いように思う。骨幹部の骨折で、複数のピースに別れているような症例では、仔牛であってもダブルプレートを用いるべきなのだと思う。


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