子牛と子馬におけるエポキシ-ピン創外固定での開放骨折治療 (Aithal et al. 2018)

はじめに

ピンを用いた創外固定はピンを骨折部の近位および遠位に挿入し、ピン同士を固定することで骨折部に対して免重する固定方法です。

今回、インドの獣医師によるエポキシ-ピン創外固定での治療成績が Vet Comp Orthop Traumatol に掲載されていました。

残念ながら僕はこのピンを用いた創外固定手術を実施した経験はありません。
しかし、この治療方法には興味があり、子牛や子馬の骨折に対して実際に有用な治療方法であれば、準備をしておきたいと考えています。

今回、ご紹介するインドからの報告は
Aithal, H. P., Kinjavdekar, P., Pawde, A. M., Dubey, P., Kumar, R., Tyagi, S. K., & Madhu, D. N. (2019). Epoxy-Pin External Skeletal Fixation for Management of Open Bone Fractures in Calves and Foals: A Review of 32 Cases. Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology, 32(03), 257-268.
になります。

論文紹介


著者らはこのケースシリーズで子牛および子馬の開放骨折に対するエポキシ-ピン創外固定の治療成績を評価することを目的としています。

この論文では28頭の子牛および4頭の子馬(体重45-105kg)における肘と後膝よりも遠位における骨折症例の回顧的調査になっています。この論文で治療に使用しているピンは直径3mmのキルシュナーピンになります。骨折部の近位および遠位に少なくとも2本のキルシュナーピンを挿入し、皮膚から2cm以内の部位で骨折部方向にピンを曲げ、近位と遠位のピンをエポキシ樹脂を用いて固定しています。
エポキシ樹脂は直径20-25mmになるように固定します。

このエポキシ-ピン創外固定は手技的に容易であり、処置直後から骨折部に安定性を与えているため、処置後から体重の負荷が可能であったと報告されています。32症例中17症例で処置から45-60日以内に骨折の治癒が認められています。

ピン抜去から12ヶ月後の追跡調査では、14例で非常に良好な結果を得ることができ、9例で満足いく結果を得ることができたと報告されています。

この論文の結果より著者らは、
肘および後膝以下の不安定な開放骨折に対する複数のピンを用いたエポキシ-ピン創外固定は安定的な固定を得ることが可能であると考えています。

結果として、このエポキシ-ピン創外固定は100kg前後までの子牛・子馬の下肢部の開放骨折に対する有用な治療方法であると提案しています。


感想


このようなキルシュナーピンとパテを用いた創外固定は国内では帯広畜産大の山岸先生が症例を報告しており、良好な成績を示しています。僕自身はこのような方法の経験がありません。
現在の僕の疑問点としては、中手骨、中足骨に関してはこのパテ-ピン創外固定がtransfixation pin castよりも有用な点は何かということです。
また、手術後の管理についてはこのような創外固定方法で清潔な管理が可能なのかという不安があります。

しかし、この論文の成績では良好な治癒を得ており、このような成績を示すのであれば、治療の選択肢なり得ると考えています。特に、子馬の中手骨および中足骨の開放骨折に対して使用可能であれば、準備しておくべきかもしれません。

取り急ぎ、エポキシ樹脂については準備してみようと思います。



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