はじめに
”馬の後肢跛行をどのように診断するか”をテーマに講習会が実施されました。
講師にはカタールのDr. Tatiana Vinardellです。
後肢の跛行診断は前肢と比較し、私にとっては難しいと感じています。
今回の講習会は生産者向けの開催でしたが、私にとっても非常に有益な情報を多々得ることができました。
今回、勉強することのできた内容を少し復習してみます。
復習
後肢の跛行の原因の15%は後膝領域、9%は骨盤領域だと報告されているようです。両方を合わせて24%ですのでかなりの割合になります。
後肢跛行を診断する際には、24%は後膝より近位に起因する跛行だということを認識する必要がありそうです。
また、徹底的な臨床検査、診断麻酔、核シンチグラフィーを実施しても6%の馬では跛行の原因を確定できなかったと報告されています。
私個人の経験では、原因を特定できない後肢跛行の割合はもう少し多いように感じています。おそらく、個人的な跛行診断知識、技術の差に加え、核シンチグラフィー検査ができないところがその原因だと思います。
後肢跛行の診断のために臨床獣医が実施する2つの方法としては、
垂直運動・回転運動をよく観察することだということです。
垂直運動を評価するためには、特に以下の2つの点が重要だとのことです。
・患肢にかかる下向きの動きが小さくなる
・患肢から離れる上向きの動きが小さくなる
回転運動を評価するためには、以下の2つの点が重要だとのことです。
・hip hike;
骨盤が下がっている時に寛結節が上がっている現象
・hip dick;
患肢の屈曲により骨盤が跛行している側に回転したことで寛結節が通常より下がる現象
この垂直運動・回転運動をよく観察し、跛行の患肢を診断していくことが大切なようです。垂直運動については跛行検査時に注意し観察していましたが、回転運動については勉強不足のため、今回の講習で初めて聞く内容でした。
今後の跛行検査では垂直運動だけでなく、回転運動についても注意していきたいです。
さらに興味深い内容としては、尾の運び方と跛行に関連があるのかについて調査研究が実施されていたようです。私は残念ながらこの研究については知らなかったです。
研究では150頭の跛行の馬について調査が実施され、跛行の程度と持続時間、馬の年齢、尾の傾きの有無や程度の間には関連性が認められなかった。このため、この研究の結論としては、尾の運び方を跛行の指標と決めつけるべきではないとしています。
これまでに跛行検査の際に尾に注目したことがなかったため、非常に興味深い内容でした。講演したDr. Tatianaはこのように尾の動きと跛行には関連がないと報告されているものの、個人的には跛行検査の際には尾の動きにも注目しており、跛行診断の際の補助的な情報になると話していました。
今回の講演は非常に勉強になりました。
生産者および騎乗者向けでしたが、私にとっても素晴らしい情報を得ることができました。
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