1回の麻酔でまとめて行う鼻まがり矯正(4頭の症例集積)(Schumacher et al.2008)

今回ご紹介するのは、鼻まがり(wry nose、campylorrhinus lateralis)を有する馬4頭に対して、上顎骨・切歯骨および鼻骨の骨切り・内固定と、鼻中隔の切除を1回の麻酔下でまとめて行った術式の症例集積です。Schumacher氏らによる研究で、Veterinary Surgery誌(2008年、37巻142-148頁)に掲載されています。

研究の概要

鼻まがりは、上顎骨・切歯骨・鼻骨・鋤骨・鼻中隔の先天性の短縮・偏位変形とされています。多くの品種で報告される一方、アラブ種で発生率が高いとされ遺伝的関与も示唆されていますが、遺伝様式そのものは報告されていないとのことです。偏位の程度は軽度から重度(最大90°)まで幅があり、切歯の咬合不全・哺乳困難・安静時の呼吸雑音を呈することがあると述べられています。

従来法としては、上顎骨・切歯骨の骨切り・整復・肋骨移植による固定を行う第1段階と、その3か月後に鼻骨の骨切り・鋼線固定および鼻中隔変形部の切除を行う第2段階からなる、2期に分けた術式が報告されていたとのことです。本研究では、5〜17か月齢の馬4頭を対象に、これらの処置を1回の麻酔下でまとめて行う術式とその転帰が報告されています。

具体的な術式としては、気管切開下で全身麻酔を導入し、あらかじめ肋骨の一部を採取して移植片として準備。歯肉切開により上顎骨・切歯骨の最大彎曲部を骨切りし、下顎切歯との咬合が合うよう整復したのち、凹側の骨欠損に肋骨移植片を充填し、スタインマンピン(1例)または鋼線・プレート・スクリュー(残る3例)で固定したと記載されています。続いて鼻骨も同様に骨切りし、凹側の欠損を肋骨移植片または凸側の楔状骨切りで補ったうえで固定。最後にトレフィンで鼻骨に小孔を作成して鼻中隔にアプローチし、吻側2〜3cmを残して鼻中隔をほぼ全切除したとされています。

結果として、麻酔時間は平均4時間、輸血を要した例はなく、全頭が術後6時間以内に採食を再開したと報告されています。長期経過(術後10〜29か月)では、4頭中3頭が意図した用途(馬場馬術・障害馬術、平地競走、乗馬)で運動能力に支障なく供用され、残る1頭も牧場での運動に問題はなかったと記載されています。なお1例では、鼻翼皺襞の虚脱による呼吸雑音がみられましたが、皺襞切除により恒久的に解消したとされています。

著者らは、1回の麻酔下でまとめて処置することで従来の2期法に比べ回復期間・費用の負担が軽減される点を利点として挙げています。また、1歳未満馬では鼻骨虚脱のリスクが指摘されていたにもかかわらず、今回の4頭(うち3頭が1歳未満)でも鼻骨虚脱は生じなかったとし、これは骨切り片を鋼線またはプレートで親骨にしっかり固定したためと考察されています。

日高での意味

本症例集積の対象は生後5〜17か月と、新生子期を過ぎてから治療対象となった例を含みます。鼻まがりは新生子期での早期対応が基本とされますが、診断・判断の時期を逃した症例であっても、1回の麻酔下でまとめて矯正できる術式が選択肢としてあり得るという点は、育成期の馬を診療するうえでの参考になり得ると考えられます。また、鼻翼皺襞の虚脱による術後呼吸雑音は、術式を問わず鼻まがり矯正術に共通し得る合併症として、飼い主への事前説明の材料になり得ると考えられます。

感想

この方法は骨がしっかりとしているある程度月齢の進んだ症例においては選択肢となり得る方法であると考えている。
私自身もこの方法をもちいて1例の鼻曲がり手術を実施したが、無事に鼻曲がりは改善された。ただ、鼻中隔の切除部位が1回目の手術では十分とは言えず、2回目の手術を必要とした。
鼻曲がりの手術は1回ですべてがきれいに治る、そんな魔法のような手術ではない。ただ、この手術には可能性があると信じている。


出典:Schumacher J, Brink P, Easley J, Pollock P. Surgical Correction of Wry Nose in Four Horses. Vet Surg. 2008;37:142–148. DOI: 10.1111/j.1532-950X.2007.00362.x

北海道で働く大動物獣医師
X:@Steelma49143492

0 件のコメント :

コメントを投稿