鼻中隔切除の新しいアプローチ:喉頭切開法の検討

Loinaz RJ, Boutros CP, Rakestraw PC, Taylor TS. Evaluation of a Laryngotomy Approach for Near-Total Resection of the Nasal Septum in the Horse. Vet Surg. 2012;41:643–648. DOI: 10.1111/j.1532-950X.2012.00974.x

今回ご紹介するのは、馬の鼻中隔をほぼ全切除する際の新しいアプローチ(喉頭切開法)を、既存の経鼻骨トレフィン・3本ワイヤー法と比較検討した研究です。Loinaz氏らによる研究で、Veterinary Surgery誌(2012年、41巻643-648頁)に掲載されています。なお本研究の対象は、臨床的な鼻疾患を有する馬ではなく、研究用に提供された呼吸器疾患の既往のない馬10頭であり、術式そのものの実行可能性・合併症を比較検討したものである点にご留意ください。


研究の概要

鼻中隔切除は、発生学的異常、外傷、感染、まれに腫瘍性病変により鼻中隔が肥厚・偏位し気流を妨げる場合に適応となるとされています。従来法として、トレフィンで鼻骨に孔を開け3本のワイヤーを用いて切離する「3-wire法」が知られていますが、鼻腔内という限られたアクセス経路のため、出血量を抑えつつ迅速に切除できる術式が求められてきたと記載されています。


本研究では、呼吸器疾患の既往のない馬10頭をコイントスで無作為に2群に分け、一方には既報の3-wireトレフィン法を、もう一方には新たに考案した喉頭切開アプローチ(腹側正中喉頭切開から2本のワイヤーとDoyen鉗子を併用して切離する)を実施したとされています。術後45日の時点で安楽死し、頭部を正中断して切除量・残存断端を計測したと記載されています。


手術時間・鼻中隔切除率(中央値)

3-wireトレフィン法 喉頭切開法

手術時間 38分 31分

鼻中隔切除率 85.5% 86%

主な合併症 骨性腫脹・創感染(各2例) 吻側断端の一過性肉芽(3例・45日で治癒)

両群とも大きな術中合併症なく鼻中隔のほぼ全切除を達成し、切除率・手術時間に統計学的な有意差はなかったとされています。著者らは、喉頭切開法の利点として、口腔内に手を入れてワイヤーを回収する操作が不要なため頭部の小さい馬でも技術的負担が少ないこと、また3-wire法で起こりうる背側・尾側ワイヤー同士の交差(切離不良につながりうる)が構造上起こらないことを挙げています。一方で本研究の限界として、対象馬はいずれも正常な鼻中隔を有しており、臨床的に偏位・肥厚した鼻中隔での有用性は今後の検討課題であるとしています。


日高での意味

本研究は鼻まがりそのものの症例ではなく、鼻中隔切除という手技単体の比較検討である点にご留意いただく必要がありますが、これまでご紹介してきた鼻まがりの矯正術(Sapper 2021、Schumacher 2008)はいずれも鼻中隔切除の工程を含んでおり、この喉頭切開アプローチはその代替術式の選択肢として位置づけられると考えられます。特に頭部が小さい仔馬・若馬において、口腔内操作を要さない点は技術的な負担軽減につながる可能性があり、術式選択の参考になり得ると考えられます。


感想

喉頭からの鼻中隔切除は実際に数頭を実施した経験があり、非常に優れた手術手技であると考えている。喉頭切開手術は声帯切除時によく行っており慣れた手技だ。このアプローチはその意味でも私にとって選択しやすい。

小さなボーンフラップを作成するよりもこの方法は外見的にも好ましいを考えている。

出典:Loinaz RJ, Boutros CP, Rakestraw PC, Taylor TS. Evaluation of a Laryngotomy Approach for Near-Total Resection of the Nasal Septum in the Horse. Vet Surg. 2012;41:643–648. DOI: 10.1111/j.1532-950X.2012.00974.x

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