今回ご紹介するのは、仔馬2頭にみられた鼻まがり(wry nose、campylorrhinus lateralis)に対し、歯肉アプローチとロッキングコンプレッションプレート(LCP)を用いた新しい外科的矯正法を報告した症例報告です。Sapper氏らによる研究で、Equine Veterinary Education誌(2022年、34巻4号e138-e144頁、2021年オンライン先行公開)に掲載されています。
研究の概要
鼻まがりは、吻側頭蓋の骨(上顎骨・切歯骨・鼻骨、鼻中隔など)が側方、時に腹側に偏位する先天性奇形とされています。切歯の咬合不全により哺乳に支障をきたしたり、鼻腔の狭窄により呼吸雑音や呼吸困難を生じたりすることがあると記載されています。軽度の変形は成長とともに自然矯正されることもある一方、重度の変形では外科的介入、あるいは苦痛を避けるための安楽死が選択されてきたとされています。
本報告では、スイス・ウォームブラッド種の牝馬(生後3週齢、症例1)とフリージアン種の牡馬(生後7.5週齢で手術、症例2)の2頭を対象に、以下の術式が行われたと記載されています。全身麻酔・気管切開下で、まず鼻中隔の吻側部を切除。続いて歯肉アプローチにより切歯骨・上顎骨を露出し、骨切りののち3.5mmLCPとロッキングスクリューで固定しています(スクリューの一部は切歯・前臼歯にも設置されたとされています)。さらに鼻骨の変形部を骨切りし、症例1は2.4mm UniLOCKプレート、症例2は2.7mm LCPプレートで固定したと報告されています。
結果として、症例1では上顎の偏位が58°から4°に、鼻中隔(残存部)が55°から20°に、鼻骨が50°から5°に、上顎短縮(brachygnathia superior、推定約3.6cm)は1.6cmまで改善したとされています。ただし術後、鼻中隔残存部による気道閉塞のため内視鏡下での追加切除、さらに鼻翼皺壁の切除という計3回の処置を要しています。症例2では上顎偏位が30°から7°に、鼻中隔全体の偏位が54°から16°に、鼻骨が34°から4°に改善した一方、上顎短縮はむしろ1.9cmまで増加したと記載されています。フォローアップ(術後19〜43か月)では、症例1は4.5歳時点でセラピー乗馬に供用され駈歩時に軽度の呼吸雑音が残る程度、症例2は術後約2年の時点で軽度の持続的呼吸雑音と上顎短縮が残存したものの採食への影響はなく、その後関連のない膝関節の軟骨下骨嚢胞のため安楽死に至ったと報告されています。
著者らは、この歯肉アプローチが外側頭部の皮膚・筋切開を伴わないため軟部組織損傷が少なく、血管・神経の温存に優れる点を利点として挙げています。一方で上顎短縮は完全には解消できず、むしろ増悪した例もあったとし、上下切歯のワイヤー固定や凹側への肋骨移植の併用が改善策として考察されています。手術適齢については、従来2〜3か月齢が推奨されてきたとされる一方、本報告の症例(3週齢・7.5週齢)はいずれも骨癒合が良好かつ速やかであったとされ、より若齢での手術も選択肢になり得ると考察されています。なお、症例数がわずか2頭であることが本報告の主な限界として明記されています。
日高での意味
鼻まがりは発生頻度の高い疾患ではありませんが、生産現場で新生子に遭遇した際、外科的対応の選択肢や紹介判断の材料になり得ると考えられます。比較的低侵襲とされる術式でも上顎短縮などの変形が完全には解消されない場合があり、術後も呼吸雑音がある程度残り得るという点は、飼い主・生産者への説明の際、過度な期待を招かないよう伝える材料になり得ると考えられます。また、従来推奨されてきたより若い週齢での手術が可能な場合があるという点も、対応を検討するタイミングの参考になり得ると考えられます。
感想
毎年数頭ですが相談をうける鼻曲がり。手術の方法があり、希望すれば手術を受けることも可能です。この論文では出生後1‐2カ月前後での手術というかなり早期での手術を実施し成功させています。鼻曲がりは重度の症例ではうまく母乳を飲むことができず、これが最も大きな問題の1つとなり得ます。また、手術後についても人が手を掛けてあげることが必要となります。
本論文では、本来であれば治療が難しいこのような症例が助かる可能性を示し、かつ生後短い期間での手術成功を報告しており、私にとってもとても有用な道しるべになります。
出典:Sapper CB, Suárez Sánchez-Andrade J, Theiss F, Fürst A. Gingival approach to correct wry nose using locking compression plates in two foals. Equine Vet Educ. 2022;34(4):e138–e144. DOI: 10.1111/eve.13552
北海道で働く大動物獣医師
X:@Steelma49143492
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