今回は、肩甲骨骨折に対してプレートによる内固定手術を実施した症例報告を紹介したいと思います。
肩甲骨骨折は馬においては稀な骨折です。肩甲骨骨折のほとんどは2歳以下の馬に認められる肩甲骨関節窩上結節の骨折なので、肩甲骨の頸部や体部での骨折は非常に稀となります。
このような背景からこれまでに報告された肩甲骨頸部骨折、肩甲骨体部骨折の症例は多くありません。今回、ご紹介する論文では10日齢のWarmbloodの子馬の左肩甲骨頸部骨折の症例です。
今回紹介する論文は
Kamm, J. L., Quinn, G., & van Zwanenberg, D. (2017). Fixation of a complete scapular neck fracture in a foal using two 3.5 mm locking compression plates. Equine Veterinary Education, 29(4), 180-183.
となります。
それではSummaryを和訳してみます。
この症例報告では子馬の肩甲骨、変位し、横骨折であった症例の外科的整復の成功を報告する。3.5mmのLocking Compression Plateを肩甲骨棘の前後に1枚づつ、計2枚を用いて内固定を実施した。肩甲上神経は手術創より容易に確認でき、神経は骨折部を跨いで無傷で走行していた。しかしながら、骨折線の周囲では骨折に伴い炎症が認められた。内固定を実施された子馬は長期間の神経麻痺なしに回復し、手術1.5年後には正常な状態であった。
この論文では、大動物の整形外科でよく用いられる4.5mm、もしくは5.5mmのLocking Compression Plateではなく、3.5mmのLocking Compression Plateを用いて手術を実施していた。8穴を頭側に、9穴を尾側に挿入しています。
この手術では4.0mm海綿骨螺子、3.5mm Locking Head Screwを用いて内固定が実施されている。海綿骨螺子は10本、Locking Head Screwは6本用いられていた。
螺子の長さは13-32mmであり、いずれの螺子もセルフタップを使用している。
患馬は術後3ヶ月間の馬房内休養を実施し、その後、小さな放牧地での制限運動を実施、さらに大きな放牧地での運動を行なっている。
手術から4ヶ月後のX-ray検査で、内固定に使用した海綿骨螺子のうち1本が破折していたが、骨折の治癒は順調であった。
この論文でのポイントは
・新生子馬の肩甲骨頸部骨折は内固定により治癒
・内固定には3.5mm Locking Compression Plateを使用
・4.0mm Locking Head Screwを使用
だと考えています。
新生子馬の肩甲骨頸部骨折(完全横骨折、変位あり)が治癒したという素晴らしい結果です。これまでにも同様の報告はDCPを用いたものでわずかに報告されています。
今回の報告では初めてLocking Compression Plateを用いていると思われます。
Locking Compression Plateを用いることでより骨折部は安定すると考えられています。
ただ、この論文のDiscussionでも触れられていましたが、この症例では骨折線の遠位にはいずれのプレートにおいても1本ずつしかLocking Head Screwが挿入されていませんでした。このことが手術後の骨折部の不安定に繋がり、4.0mm海綿骨螺子の破折の原因かもしれません。
今回は以上です。
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