はじめに
今回は結腸捻転について米国外科専門医にアンケート調査を行い、その結果を報告している論文を紹介しようと思います。結腸捻転は生産地で多く認められる疝痛の1つとなります。
僕が働く日高管内においても遭遇する疝痛であり、特に分娩後の繁殖牝馬でよく認められることが報告されています。
今回紹介する論文は
Fiege, J. K., Hackett, E. S., Rao, S., Gillette, S. C., & Southwood, L. L. (2015). Current treatment of ascending colon volvulus in horses: a survey of ACVS diplomates. Veterinary Surgery, 44(3), 398-401.
になります
はじめにAbstractを日本語訳します。
目的:大結腸捻転に対する近年の治療および治療成績に関する調査結果を報告すること
研究デザイン:インターネットでの調査
調査対象:馬の消化器疾患に対する外科手術を実施している米国外科専門医151名
方法:2010年までに米国外科専門医に認定された410名に対してインターネットでのアンケート調査を実施した。アンケートは大結腸捻転の治療選択とその結果について実施した。
結果:162人の米国外科専門医から返答を得た。このうち151人が馬の消化器外科手術を実施していた。馬の結腸捻転の開腹手術は年に20例以下、治療方法で最もよく選択されるのは結腸捻転の整復プラスマイナス骨盤曲の切開であった。全体の生存率は70%であり、治療方法による生存率の違いは認められなかった (P=0.27)。専門医達は早期の外科介入が結腸捻転症例の生存率を向上させる最も大切な要因だと考えている。
結論:結腸捻転症例の生存率は良好であった。回答者は良好な生存率は早期の外科介入によると考えている。今回の調査結果は今後の研究のための基礎データ、もしくは外科専門医の治療方針についての基礎データとなり得る。
この論文では162名の米国外科専門医に対してアンケート調査を実施した結果を解析しています。
回答者たちのうち33%は年間25例未満の疝痛に対する開腹手術を行い、43%は26-50例、17%は51-100例、5%は101-125例、2%は125例以上の手術を実施している。
私はおそらく年間30-40例の疝痛に対する開腹手術を実施している。この数字であれば、回答者たちのボリュームゾーンと一致する。
生存率は約70%であり、既報と比較すると高い値を示している。
これは既報に比較し、近年の手術成績が向上していることを示していると考えている。
結腸捻転が致死的な疾病の1つである事実は変わらないが、その救命率は上昇してきているのだろう。
私は結腸の整復に加えて骨盤曲切開、内容排出を実施している。
この治療方法は今回の論文でも最も選択された方法であった。
次に選択された方法としては結腸の整復のみ、そして結腸切除であった。
結腸切除は一般的には結腸捻転により結腸の壊死と判断された場合に選択される救命手術であるが、今回の調査ではかなりの高頻度で結腸切除術を選択している外科医が少数存在していた。これらの外科医は壊死した結腸の切除だけでなく、結腸捻転の再発防止として切除を実施していた。
また、Colopexyは私たちの施設では、繁殖牝馬の結腸捻転症例に対しては積極的に実施しているが、この論文でのColopexy調査率は決して高くない。
49%の外科医はColopexyを全く実施していない。
さらにColopexyを実施する外科医のほとんどが2回目もしくは3回目の結腸捻転症例に対して実施しており、私たちの施設のように1回目の結腸捻転症例からColopexyを実施するのはごく僅かな外科医のみであった。
結腸捻転は早期に外科介入することで、より良い予後を得ることができると考えられており、近年の報告では、症状の発見から手術までの時間によりその救命率が異なることが報告されている。
今回の調査では具体的な数字を得ることはできなかったものの、多くの外科医が救命率を向上させるために必要なこととして、早期外科介入を挙げており、結腸捻転の救命率を向上させるためには、手術施設だけでなく1次診療に携わる獣医師の協力が必要だと考えられる。
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