今回ご紹介するのは、せりに上場されるイヤリング・2歳のサラブレッドを対象に、前肢の近位種子骨のレントゲン所見と、隣接する繋靱帯脚部の超音波所見がどこまで一致するかを調べた論文です。Peat氏らによる研究で、Equine Veterinary Journal誌(2025年、57巻3号)に掲載されています。
研究の概要
本研究では、せりに上場されたイヤリングおよび2歳のサラブレッドの前肢近位種子骨について、レントゲン検査と超音波検査を同時に行い、両者の所見の対応関係を検討しています。対象は当歳551頭(種子骨・繋靱帯脚部ユニット2204組)、2歳馬334頭(同1336組)です。レントゲン所見としては種子骨の血管溝の拡大(グレード分類)と辺縁の陥凹(abaxial concavity)が、超音波所見としては繋靱帯脚部付着部の線維構造変化(fibrillar change)や骨表面の変化が評価対象とされています。
報告によれば、グレード2の血管溝拡大を示した種子骨のうち31%で、隣接する繋靱帯脚部にグレード2以上の線維構造変化が認められたとされています。グレード3の血管溝拡大では、この割合は59%に上ったとされています。なお2歳馬においても同様の傾向がみられ、グレード2で47%、グレード3では67%の種子骨で、隣接する繋靱帯脚部にグレード2以上の変化を伴ったと報告されています。一方、レントゲン上で辺縁の陥凹のみが見られた種子骨では、超音波上の骨表面変化や線維構造変化を伴う割合は、血管溝拡大が見られた種子骨と比べて低く、グレード2以上の線維構造変化を伴ったのは当歳・2歳ともわずか1例ずつだったとされています。
著者らは、血管溝の拡大を伴わない辺縁陥凹については、繋靱帯脚部の障害(desmopathy)とは由来が異なる可能性があり、それ単独を繋靱帯脚部障害の指標とみなすべきではないと述べています。
日高での意味
せりのレポジトリー読影では、種子骨の血管溝拡大や辺縁の陥凹はどちらも日常的に目にする所見です。本研究が示すのは、「同じレントゲン所見でも、血管溝拡大か辺縁陥凹単独かで、繋靱帯側への負担を示す度合いが異なりうる」という点です。購買者・生産者への説明の際、所見をひとまとめに扱うのではなく、血管溝拡大か辺縁陥凹単独かを区別して伝える材料になり得ると考えられます。
著者らは実務上の目安として、当歳ではグレード2または3の血管溝拡大、あるいは辺縁の新生骨がみられる種子骨について、隣接する繋靱帯脚部の超音波検査を追加することを提案しています。2歳馬ではこれに加え、内側前肢種子骨のグレード1血管溝拡大も対象に含めています。この基準に従うと、超音波検査が追加で必要になるのは当歳の前肢繋靱帯脚部の約6%、2歳馬で約9.8%にとどまり、逆に言えば当歳の94%、2歳馬の90%の前肢種子骨は追加の超音波検査を要さないとされています。ただし2歳馬の内側前肢種子骨にグレード1の血管溝拡大がある場合は例外で、約17%(6頭に1頭)に隣接繋靱帯脚部のグレード2以上の変化を伴ったと報告されており、著者らはこれを臨床的に重要な所見としています。
感想
これまでの多くの論文や調査において種子骨の線状陰影、そして種子骨の辺縁について調べられています。種子骨の問題は繋靭帯の問題とリンクして語られることが多く、レポジトリーにおいても多くの購買者が気にする所見の1つだと思っています。
ただ、種子骨の線状陰影については多くの馬に認められていますし、形状の軽度な変化も同様だと思っています。
実馬の臨床症状をよく確認し、総合的に判断することが大切だと考えています。
出典:Peat FJ, Kawcak CE, McIlwraith CW, Berk JT, Keenan DP. Concurrent radiological and ultrasonographical findings in the forelimb proximal sesamoid bones and adjacent suspensory ligament branches in yearling and 2-year-old Thoroughbred sales horses. Equine Vet J. 2025;57(3):654–665. DOI: 10.1111/evj.14120
北海道で働く大動物獣医師
X:@Steelma49143492
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