はじめに
第三手根骨の板状骨折は育成馬、競走馬で認められる疾患です。第三手根骨が近位から遠位に到るまでの骨折を指しており、競走復帰まで長期間の休養が必要となります。
3.5mm皮質骨蜾子を用いて関節鏡下で内固定手術を実施するのが現在もっともスタンダードな治療方法です。
保存療法では骨癒合が期待できないため、予後は期待できないと考えています。
今回、紹介する論文は英国での第三手根骨板状骨折に対して内固定手術を実施したサラブレッド種競走馬の術後成績に関する報告です。
英国、New Market Equine Hospital での手術成績が記述されています。
今回、取り上げる論文は下記の論文です。
Baldwin, C. M., Smith, M. R. W., Allen, S., & Wright, I. M. (2019). Radiographic and arthroscopic features of third carpal bone slab fractures and their impact on racing performance following arthroscopic repair in a population of racing Thoroughbreds in the UK. Equine veterinary journal.
それでは論文内容の紹介です。
論文内容
第三手根骨板状骨折はサラブレッド種競走馬に一般的に認められる疾患です。この論文の背景は1986年に開発された関節鏡下での第三手根骨板状骨折の内固定手術の手術成績についてこれまでに詳細な報告がないことに加え、英国における骨折の詳細、手術後の競走成績についての報告がないことです。
このような背景からこの論文は英国でのサラブレッド種競走馬における第三手根骨板状骨折の状況の詳細および関節鏡下での内固定手術後の競走成績を明らかにすることを目的としていると記載されています。
この論文の研究デザインは回顧的な症例報告になります。
この論文では英国、Newmarket Equine Hospital で2006年から2015年の期間に第三手根骨の板状骨折と診断され、関節鏡下で内固定手術を受けたサラブレッド種競走馬と調査対象とし、医療記録を調査していると記載されています。医療記録に加え、X-ray画像および関節鏡画像についても調査しています。治療頭数および損傷箇所と手術後の競走成績について解析を行ったと記載されています。
この論文の調査の結果、第三手根骨板状骨折は橈側面により多く認められることが明らかとなったと記載されています (45/71 63.4%)。関節鏡で骨片の粉砕が認められた症例は71例中42例であったと記載されています(59.2%)。骨片の粉砕は板状骨折の骨折線のもっとも掌側に認められたようです。65例中41例(63.1%) で手術後少なくとも1回は競走に出走したと記載されています。この論文では牝馬は牡馬に比較し有意に手術後の出走率が低い値を示しました (P<0.001)。手術前に出走していた馬は手術前未出走であった馬に比較し有意に手術後の出走率が高かったと記載されています (OR 4.4, 95% CI 1.4–13.5, P = 0.01) 。この論文では術後の馬では僅かだが、明らかに競走成績の低下が認められました。
この論文の限界点は、論文内での症例は馬外科医により手術適応症例と診断された症例のみが調査対象となっている点である。
この論文では、骨折の形状はX-ray検査により特定することが可能だが、粉砕や他の関節内の損傷をX-ray検査のみで予測することは困難だと記載されています。
関節鏡は直接損傷部位の治療を行うだけでなく、損傷の診断においても有用な役割を果たすことが示されています。
感想
この論文では、第三手根骨の板状骨折の手術成績について記載されています。
英国、Newmarket Equine Hospital の手術症例を用いてサラブレッド種競走馬の内固定手術成績を示しています。
手術後の競走復帰率が63%というのは、やや低い値に思います。
しかしながら、牝馬の方が再出走率が有意に低いことを考えると、長期間の休養から一定数の牝馬が繁殖牝馬への用途変更を行ったのではないかと思います。
この論文で記載されているように、X-ray検査により骨折の形状は予測可能ですが、実際に関節鏡ではX-ray検査画像よりも多くの情報を得ることができます。
この論文ではその点をデータを用いて明らかにしていました。
第三手根骨の板状骨折は育成馬、競走馬で認められる疾患です。第三手根骨が近位から遠位に到るまでの骨折を指しており、競走復帰まで長期間の休養が必要となります。
3.5mm皮質骨蜾子を用いて関節鏡下で内固定手術を実施するのが現在もっともスタンダードな治療方法です。
保存療法では骨癒合が期待できないため、予後は期待できないと考えています。
今回、紹介する論文は英国での第三手根骨板状骨折に対して内固定手術を実施したサラブレッド種競走馬の術後成績に関する報告です。
英国、New Market Equine Hospital での手術成績が記述されています。
今回、取り上げる論文は下記の論文です。
Baldwin, C. M., Smith, M. R. W., Allen, S., & Wright, I. M. (2019). Radiographic and arthroscopic features of third carpal bone slab fractures and their impact on racing performance following arthroscopic repair in a population of racing Thoroughbreds in the UK. Equine veterinary journal.
それでは論文内容の紹介です。
論文内容
第三手根骨板状骨折はサラブレッド種競走馬に一般的に認められる疾患です。この論文の背景は1986年に開発された関節鏡下での第三手根骨板状骨折の内固定手術の手術成績についてこれまでに詳細な報告がないことに加え、英国における骨折の詳細、手術後の競走成績についての報告がないことです。
このような背景からこの論文は英国でのサラブレッド種競走馬における第三手根骨板状骨折の状況の詳細および関節鏡下での内固定手術後の競走成績を明らかにすることを目的としていると記載されています。
この論文の研究デザインは回顧的な症例報告になります。
この論文では英国、Newmarket Equine Hospital で2006年から2015年の期間に第三手根骨の板状骨折と診断され、関節鏡下で内固定手術を受けたサラブレッド種競走馬と調査対象とし、医療記録を調査していると記載されています。医療記録に加え、X-ray画像および関節鏡画像についても調査しています。治療頭数および損傷箇所と手術後の競走成績について解析を行ったと記載されています。
この論文の調査の結果、第三手根骨板状骨折は橈側面により多く認められることが明らかとなったと記載されています (45/71 63.4%)。関節鏡で骨片の粉砕が認められた症例は71例中42例であったと記載されています(59.2%)。骨片の粉砕は板状骨折の骨折線のもっとも掌側に認められたようです。65例中41例(63.1%) で手術後少なくとも1回は競走に出走したと記載されています。この論文では牝馬は牡馬に比較し有意に手術後の出走率が低い値を示しました (P<0.001)。手術前に出走していた馬は手術前未出走であった馬に比較し有意に手術後の出走率が高かったと記載されています (OR 4.4, 95% CI 1.4–13.5, P = 0.01) 。この論文では術後の馬では僅かだが、明らかに競走成績の低下が認められました。
この論文の限界点は、論文内での症例は馬外科医により手術適応症例と診断された症例のみが調査対象となっている点である。
この論文では、骨折の形状はX-ray検査により特定することが可能だが、粉砕や他の関節内の損傷をX-ray検査のみで予測することは困難だと記載されています。
関節鏡は直接損傷部位の治療を行うだけでなく、損傷の診断においても有用な役割を果たすことが示されています。
感想
この論文では、第三手根骨の板状骨折の手術成績について記載されています。
英国、Newmarket Equine Hospital の手術症例を用いてサラブレッド種競走馬の内固定手術成績を示しています。
手術後の競走復帰率が63%というのは、やや低い値に思います。
しかしながら、牝馬の方が再出走率が有意に低いことを考えると、長期間の休養から一定数の牝馬が繁殖牝馬への用途変更を行ったのではないかと思います。
この論文で記載されているように、X-ray検査により骨折の形状は予測可能ですが、実際に関節鏡ではX-ray検査画像よりも多くの情報を得ることができます。
この論文ではその点をデータを用いて明らかにしていました。
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