論文紹介: 馬の浅趾屈腱の踵骨付着部における損傷 19症例 (Wright & Minshall 2012)

今回は後肢、飛節の底側に認められる問題の1つである
馬の浅趾屈腱の踵骨付着部における損傷について報告している論文の紹介です。

この論文は浅趾屈腱の脱位について調べている際に見つけた論文です。
浅趾屈腱の脱位は過去の記事でも紹介しています。
過去の記事では脱位を整復し縫合する方法について記載していました。
今回、紹介する論文では浅趾屈腱の踵骨付着部に滑液嚢鏡でアプローチし、治療を実施する方法が記載されています。

非常に斬新な方法ですので紹介していきたいと思います。
本日紹介する論文は下記の論文です。


この論文では
浅趾屈腱の踵骨付着部の損傷した19症例についてその詳細と治療方法、治療成績について報告しています。

この論文では踵骨滑液嚢鏡手術にて浅趾屈腱の踵骨付着部の損傷と診断した症例の症例報告です。対象症例は全部で19頭、うち7頭は不安定(間欠的??)な浅趾屈腱の脱位が認められたと記載されています。踵骨滑液嚢鏡手術後、脱位が認められない症例12例中9例、不安定な脱位が認められた7例中6例で以前に使役に復帰したと記載されています。

結論として、馬の浅趾屈腱の踵骨付着部における損傷は跛行および踵骨滑液嚢の腫脹の原因となり得ること、そして踵骨滑液嚢鏡手術により損傷部位のデブライドメントを実施することで良い予後を得ることを報告しています。
また、馬における不安定な浅趾屈腱の脱位は踵骨付近にあるfibrocartilage capの腱付着部の損傷によって起こり、この部位をデブライドメントすることで、不安定な脱位から安定した脱位となり、競走馬・競技場として復帰することができたと記載されています。

いずれの病態についても術前の超音波検査で診断可能であったと報告されています。

この結果より、
踵骨滑液嚢の腫脹が認められ、跛行を呈している馬では浅趾屈腱の踵骨付着部における損傷の可能性について検討する必要があると記載されています。
また、fibrocartilage capの腱付着部の損傷が不安定な浅趾屈腱脱位の原因となっていることが明らかになり、この部分の部分切除術は技術が必要とされる処置であるが、予後の向上が期待できると記載されています。

感想
これまで浅趾屈腱の脱位については元の位置にいかに戻すのか?について考えていたが、全く考えてもいないアプローチの手術報告であった。予後も良好であり、これまで基本的には競走馬としての予後は不良と考えていた浅趾屈腱の脱位症例に出走への可能性が示せるかもしれない。機会があればぜひ挑戦してみたい手術の1つ。
                   

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