今回ご紹介するのは、
馬の内固定手術を実施した際の術創感染について研究した論文です。
馬の内固定手術が失敗する要因には多くの要因があります。この中でも術創感染は手術が成功しない主要な要因の1つとして挙げられます。
今回、ご紹介する論文は下記の論文になります。
Curtiss AL, Stefanovski D, Richardson DW. Surgical site infection associated with equine orthopedic internal fixation: 155 cases (2008-2016). Vet Surg. 2019 Jul;48(5):685-693. doi: 10.1111/vsu.13216. Epub 2019 Apr 16. PMID: 30993777.
この論文の目的は馬の内固定手術における術創感染の発生率を明らかにすること、そして、術創感染および生存できなかった症例のリスクファクターについて明らかにすることであると記載されています。
この論文では155頭の馬を調査対象としており、骨折整復もしくは関節固定を内固定手術によって行われた症例であったと記載されています。
結果として調査での術創感染率は14.2%(22/155)であり、過去に同施設で実施された調査に比較し優位に低い値を示したことが報告されています。
球節の関節固定手術および尺骨骨折に対する内固定手術を受けた馬では術創感染が認められやすいことが明らかにされました。予防のために局所に対して抗生剤を用いた症例では感染のリスクが上昇したと記載されています。
また、球節および腕節の関節固定手術症例、橈骨、上腕骨、そして脛骨骨折に対する内固定手術症例では他の症例に比較し生存率が低いことが示されています。
術創感染の発生と開放骨折か否か、骨折部を切開し整復を実施したか否か、そして、手術時間についてはそれぞれ関連性が認められなかったと記載されています。
感想
術創感染率は全体で見れば低い値を示しているように思います。特に支持組織の崩壊による球節の関節固定手術では16例中8例で術創感染が認められ、6例は術創感染のため安楽殺となっています。球節の関節固定手術の難しさを改めて考えさせられました。
また、以前の論文では3時間以上の手術時間がリスクファクターとして挙げられていましたが、今回の論文では優位な関係は認められなかったと記載されています。
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