まとめ
- 馬の腰ふら(脊柱狭窄による運動失調)に対してプレート固定による頚椎固定術は有効
- プレートはLCPが適切
- これまでのバスケットを用いた関節固定術に変わる新しい術式となり得る
はじめに
馬の腰ふらは1歳馬で多く認められる疾患の1つです。頚椎のアライメントの不整、もしくは関節の肥大などにより脊柱狭窄が起こり、脊髄が圧迫され、運動失調が引き起こされます。運動失調は主に後肢で認められます。
これまでは主に手術用バスケットを用いた関節固定術が手術方法だったようです。
近年、新たな治療方法としてプレート固定での頚椎固定術が報告されています。
今回はこのプレートを用いて頚椎固定術の手術成績を報告した論文を紹介します。
今回紹介する論文は、
Kühnle, C., Fürst, A. E., Ranninger, E., Sánchez-Andrade, J. S., & Kümmerle, J. M. (2018). Outcome of ventral fusion of two or three cervical vertebrae with a locking compression plate for the treatment of cervical stenotic myelopathy in eight horses. Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology, 31(05), 356-363.
になります。
論文紹介
これまでに一般的に頚椎の固定術に用いられてきたKerf cut cylinderと同等に頚椎の腹側へのLocking Compression Plate (LCP) での固定は安定性が得られることが近年の報告で示されている。LCPの持つ有用性は頚椎の固定術に対しても有用だと考えられる。この論文の目的は、2もしくは3つの頚椎をLCPを用いて固定する術式、合併症、そして結果を示すことだと記載されています。
この論文では、8頭の医療記録を調査し、症例のデータ、病歴、術前の運動失調のグレーディング、画像診断、外科手技、そして合併症について調査した。臨床所見の再検査、X-ray画像の評価を含めた追跡調査を可能な範囲で実施した。
2つの頚椎(5頭)、3つの頚椎(3頭)の固定術を実施した。月齢の中央値は9ヶ月齢、体重の中央値は330kg、運動失調グレードの中央値は3/5であったと記載されています。
固定に用いたプレートは6頭でナローの4.5/5.0のLCP、1頭はブロードの4.5/5.0のLCP、そして1頭は人用の4.5/5.0の大腿骨用LCPであったと記載されています。
2頭ではプレートのルーズニングのため再手術が行われました。また6頭では漿液腫が認められました。長期合併症としては螺子の腹側方向への移動が4頭で、脊柱の損傷が1頭で認められ、プレートの破損が2頭で術後720日および1116日に認められた。
結果はexcellentが3頭、goodが4頭、そしてpoorが1頭であったと記載されています。
この症例報告からLCPを用いた頚椎腹側の頚椎固定術の予後はgoodであると記載されています。また、将来、手術に伴う合併症を減らすためにより注意深い手術が必要であると記載されています。
感想
頚椎固定術にLCPを用いたcase seriesとしては初めての論文だと思います。これまでバスケットを用いて実施されていたこの手術に対してLCPを用い、深刻な合併症の発生率が低く、予後も良いと思います。また、特徴的な点は、バスケットのように特殊な手術器具を必要としないことでしょう。
プレート固定の手術経験がある手術施設であれば、器具の点では実施可能だと思います。
プレートについてはこの論文ではナローLCPを多く用いていますが、どうやらブロードの方が適切なようです。
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