LCPを用いた球節関節固定術 (Carpenter et al. 2008)

 今回ご紹介するのは、サラブレッド競走馬の繋靱帯装置の破綻(いわゆるブレイクダウン)に対して、ロッキングコンプレッションプレート(LCP)を用いて球節固定術を行った6症例の報告です。Carpenter氏らによる研究で、*Veterinary Surgery*誌(2008年、37巻263-268頁)に掲載されています。


### 研究の概要


近位種子骨とその周囲の破綻による球節の支持機構の喪失は、サラブレッド競走馬における最も一般的な致死的外傷であると記載されています。多くは内外両側の種子骨の骨折と離開、あるいは遠位種子骨靱帯や繋靱帯の完全断裂によって生じ、臨床的には負重しようとした際に球節が背側へ過伸展して沈み込む像を呈するとされています。患肢が体重を分担できないため、反対側の肢が過重負担による蹄葉炎を起こしやすくなるという点も指摘されています。この状況で放牧地での生存や繁殖供用を目指すには、インプラントによる球節の外科的固定が最も現実的な選択肢であるとされています。


従来この固定には、14〜16穴・5.5mmの広幅リミテッドコンタクトダイナミックコンプレッションプレート(LC-DCP)を10〜12度屈曲させて背側に設置する方法が用いられてきたと記載されています。本報告は、これに対してLCPを用いた例を報告したものです。著者らによれば、LCPはコンプレッションプレートとインターナルフィクセーターという2つの機能を1枚のインプラントに統合したシステムで、コンビホールにより皮質骨スクリューとロッキングスクリューを使い分けられるとされています。5.0mmロッキングスクリューはコア径4.4mmで、4.5mm・5.5mm皮質骨スクリューと比べて断面二次モーメントがそれぞれ4.6倍・1.6倍であり、曲げ・せん断に対してより強いと記載されています。またロッキングスクリューはプレートに直接締結されるため、骨とスクリューの接触面に保持力を依存しないという特徴が述べられています。


対象は2004年から2006年に治療されたサラブレッド競走馬6頭(牝5頭・牡1頭、平均4.3±1.2歳)でした。患肢は左前肢4頭、右前肢1頭、右後肢1頭。損傷の内訳は、内外両側の種子骨体部粉砕骨折が2頭、内側種子骨の高度粉砕骨折が2頭、遠位種子骨靱帯の完全断裂が1頭、繋靱帯起始部の完全断裂が1頭で、3頭が調教中、3頭が競走中の受傷でした。全例が閉鎖性損傷で、受傷直後からKimzeyスプリントで固定され、手術までの平均日数は7.3±1.4日と記載されています。初診時はいずれも5/5度の跛行で、2頭では支持肢の指動脈拍動の顕著な亢進が認められたとされています。


術式としては、側臥位で背側から進入し、伸腱を通る直線切開で球節を露出、外側側副靱帯などを切離して球節を脱臼させ、関節軟骨をキュレットで除去したうえで2.5mmドリルによる骨穿孔(osteostixis)を行ったと記載されています。繋靱帯が種子骨より近位で断裂している例では、種子骨を4.5mm皮質骨スクリューによりラグ法で固定してテンションバンドを形成し、種子骨の高度粉砕や遠位種子骨靱帯の完全断裂例では、1.7mmステンレススチールケーブルを掌側/底側に8の字状に通してテンションバンドとしたとされています。プレートは14〜16穴・4.5mm広幅LCPを10〜12度屈曲させて背側に設置し、関節を跨ぐ位置には角度をつけた4.5mm皮質骨スクリューを、さらにプレートの内外側から2本の5.5mm経関節スクリューをラグ法で挿入して圧迫を加えたと記載されています。閉創後はハーフリムのファイバーグラスギプスを装着し、麻酔覚醒は無介助(4頭)またはAndersonスリング(2頭)で行われています。


結果として、6頭中4頭(67%)が術後1年の時点で生存し、繁殖に供用可能と判断されました。牡馬1頭は種付けを行い、交配した3頭の牝馬すべてで妊娠が確認されたと記載されています。この4頭のうち2頭は高度のギプス褥瘡を生じ、1頭はインプラント感染のため術後90日で、もう1頭は術後356日に生じた瘻管のためインプラントを抜去しています。また1頭は重度の支持肢蹄葉炎を起こし、術後104日に深指屈腱切断術を要したとされています。残る2頭は近位指節間関節(繋関節)の脱臼のため、それぞれ術後16日と68日に安楽死となりました。インプラント設置に伴う術中合併症は認められなかったと報告されています。手術時間は平均215±56分、インプラント費用は平均1,711.33±206.87ドルでした。


考察では、この67%という成績が、球節固定術後に運動制限なしまで到達した52頭中34頭(65%)という既報とおおむね同等であること、また変形性関節症に対する固定術のほうが繋靱帯装置破綻に対するものより予後が良いとされていることが述べられています。LCPの利点として、プレートを骨の形状に厳密に合わせて成形する必要がないこと、固定強度がスクリュー頭部によるプレートの骨への圧着に依存しないこと、その結果として骨膜への圧迫が少なく血行を温存できることが挙げられています。またロッキングスクリューがセルフタッピングであるため、タッピングを要するLC-DCPより手術時間が短縮されるとも記載されています。一方の欠点として、ロッキングスクリューはプレートに対して角度が固定されるため関節直上のホールでは向きの自由度がないこと(これは該当部に皮質骨スクリューを角度をつけて入れることで回避したとされています)、そしてLCPとロッキングスクリューを用いた場合の費用が従来のLC-DCPと皮質骨スクリューのおよそ3倍になることが挙げられています。


安楽死となった2頭がいずれも繋関節の脱臼によるものであった点について、著者らは「球節固定術に際して、どのような場合に繋関節まで固定範囲に含めるべきか」という問いを提起しています。1頭は剖検で固定は安定し球節部の骨癒合も良好であったとされ、もう1頭も画像・臨床所見上は固定が安定していたと記載されています。この判断のために、術前にMRIやCTなどで繋関節の軟部支持組織や遠位種子骨靱帯を評価することが有用ではないかと述べられています。なお症例数が6頭にとどまることが本報告の限界です。


### 日高での意味


ブレイクダウンは日高の育成・調教現場でも遭遇し得る損傷であり、その場で「安楽死か、救命して繁殖に上げるか」という判断を迫られる場面があります。本報告が示す67%という数字は、6頭という少数例に基づくものではあるものの、生産地で繁殖価値のある馬について救命を検討する際の一つの目安になり得ると考えられます。同時に、生存した4頭のうち2頭がギプス褥瘡、2頭がインプラント抜去、1頭が支持肢蹄葉炎という経過をたどっている点は、「助かる=順調」ではないことを馬主・生産者に説明する際の材料になり得ます。また、安楽死の2頭がいずれも繋関節脱臼によるものであったという点は、種子骨の粉砕が高度な例や遠位種子骨靱帯断裂例で紹介判断・術前画像診断を検討する材料になり得ると考えられます。


### 感想

僕らが球節の関節固定術を実施した際に最も重要視した論文の1つです。
この論文は非常に細かく手技について記載してくれ、実際に手術を実施する際にかなり参考となるものでした。このような論文はまさに臨床医が書いた論文という感じがして読んでいても楽しい論文です。

実際の成績も優秀です。
日本国内においても球節の関節固定症例の生存例はあり、今後、選択肢として認知が広がることを期待しています。

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**出典**:Carpenter RS, Galuppo LD, Simpson EL, Dowd JP. Clinical evaluation of the locking compression plate for fetlock arthrodesis in six Thoroughbred racehorses. Vet Surg. 2008;37(3):263–268. DOI: 10.1111/j.1532-950X.2008.00375.x


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北海道で働く大動物獣医師

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